
【書評】マイホームのお金: 知ると知らないで一千万この差はでかい!!|2026年の住宅ローン事情とあわせて読む
マイホーム購入を検討していると、「住宅ローンの金利」「諸費用」「老後資金」など、お金にまつわる悩みは尽きません。今回は、丸山景右さんの著書『マイホームのお金: 知ると知らないで一千万この差はでかい!!』を読んだので、その内容を振り返りながら、私自身の感想と、2026年現在の住宅ローン事情と照らし合わせたポイントをまとめてみます。

- タイトル:マイホームのお金: 知ると知らないで一千万この差はでかい!!
- 著者:丸山景右
- 初版発行:2016年3月
人生最大の買い物、マイホームに、つねにつきまとう「お金」の問題。その選択が人生のバランスシートを大きく左右する。にもかかわらず、多くの人が住宅会社の営業マンや銀行員の言いなりで物件を選び、ローンを組んでいる。こうした現状に警鐘を鳴らすとともに、超低金利時代の賢い選択肢を解説。老後まで見据えた、マイホームに関する安心の人生設計のノウハウ。
概要引用元:googlebooks
以下、本書の見出しに沿って内容を振り返りつつ、当時の私が感じたことと、今読み返して思うことをあわせて書いていきます。
目次
「1000万円貯める」より「1000万円コストをかけない」が簡単という考え方
本書の冒頭では、住宅ローンの返済は定年までに終えるのが基本であること、そしてマイホーム購入は人生で最も大きな出費でありながら、最も楽しみなイベントでもあるという、当たり前だけれど忘れがちな前提が語られます。
序章のテーマは「1000万円貯めるより、1000万円コストをかけないほうがずっと簡単」というもの。住宅ローン・教育資金・老後資金は人生の3大支出であり、理想のマイホームのためなら多少予算オーバーしても借入を増やし、その分は家計の節約で補えばいいという主張がされています。
正直なところ、「予算オーバー分は節約で補える」という考え方には、当時も今も少し引っかかりを感じています。すでに家計がぎりぎりの家庭にとって、削れる余地はそう多くありません。借入を増やす判断は、節約でカバーできる前提ではなく、将来の収入見通しとセットで考えるべきだと思います。
マイホームは買うべきか?トータルでいくらかかるのか
第1章では、30代の若い世代でマイホーム購入が増えている背景として、住宅ローン金利の低さや優遇税制・補助金の充実が挙げられています。戸建て購入・マンション購入・賃貸の3パターンで50年後の資産価値を比較すると、土地が手元に残る戸建て購入が有利だという結論です。
また、4,220万円の新築一戸建てを例に、チラシに表示された価格以外にもかかる費用として、各種手数料(物件価格の5〜7%程度)、住宅ローンの利息、将来のリフォーム費用(500万円以上)、保証料などが紹介されています。手数料や保証料の種類の多さは、当時の私にとって新鮮な発見でした。
「家を建てるのは今か、5年後か」というテーマでは、住宅ローン金利は底値圏にあり、今後の物価上昇や増税を見越すと「今が買い時」という見方が示されています。本書が書かれた2016年当時はまさに超低金利の真っただ中でしたが、2026年6月時点では状況が大きく変わっています。フラット35の主要金利は前月から0.5%上昇して3.210%となり、主要銀行の10年固定金利も2.9〜3.2%台まで上昇しています。変動金利は依然として0.9〜1.1%台と低水準を維持していますが、日銀の政策金利が2026年末までに1.0%程度まで引き上げられるとの見方もあり、今後は変動金利型ローンにも上昇圧力がかかることが予想されます。「金利が低いうちに」という本書の主張は、2026年現在ではより切実な意味を持つようになったと感じます。
ライフプランとコストダウンの考え方
第2章のテーマは「ライフプラン」です。マイホームのような高額な買い物をする際は、ライフプランとキャッシュフロー(LPCF表)を把握することが大切で、定年までに住宅ローンを完済することが目標とされています。LPCF表づくりの手順としては、(1)資産・負債と直近1年の収支から現状を確認する、(2)退職後の生活状況を予測する、(3)退職後に必要なお金を見積もり、今やるべきことを導き出す、という3ステップが紹介されています。
このLPCF表をつくることで、将来のキャッシュフローの赤字を予測し、住宅ローン利息の見直しや保険の見直し、夫婦共働きの計画・継続といった対策につなげる、という流れです。理屈としては理解できるものの、実際にやってみると将来の収入や支出の予測自体が難しく、机上の空論に近い部分もあると感じました。それでも、一度立ち止まって数字に向き合う機会としては価値があると思います。
第3章では「節約は浪費の対義語であって、贅沢の対義語ではない」という考え方のもと、日常のさまざまな節約方法が表形式で紹介されています。ただ、紹介されている節約術の多くは一般的によく知られているもので、すでに実践している家庭にとっては目新しさに欠けるかもしれません。「1000万円つくる」ためにまず大切なのは健康であること、そして100万円の貯金を目標に貯金体質をつくることだ、という締めくくりは、地味ですが本質的だと感じます。
住宅ローンの基礎知識と、2026年の金利動向を踏まえた借り方・返し方
第4章・第5章は、本書の中でも特に実用性の高いパートです。住宅ローンには公的ローン、半官半民の「フラット35」、ネット銀行を含む民間ローンの3パターンがあり、変動金利は需要と供給、固定金利は10年物国債の利回りに影響を受けると説明されています。借り方のポイントは「低い金利・少ない借入額・短い返済期間」の3つで、頭金は2割程度がちょうどいいとされています。
元利均等と元金均等、固定金利と変動金利
返済方法には、毎回の返済額が一定になる「元利均等返済」と、元金部分を均等に割り利息は残高に応じて変動する「元金均等返済」があります。元利均等は毎月の支払いが一定で家計管理がしやすい一方、トータルでは元金均等より支払総額が多くなる傾向があります。
固定金利と変動金利の比較については、「固定金利は金利上昇リスクがないが金利が高め、変動金利は金利が低いが将来の変動リスクがある」という、いわば教科書通りの整理がされています。本書執筆当時は超低金利が続いていたため、変動金利を選ぶ人が多数派でした。しかし2026年6月現在、変動金利は0.9〜1.1%台と依然低水準ながら、日銀の金融政策の転換により今後上昇していく可能性が高まっています。固定金利の10年もの金利も2.9〜3.2%台まで上がっており、「金利が低いから変動」という単純な判断ではなく、将来の金利上昇シナリオを織り込んだ資金計画がこれまで以上に重要になっていると感じます。
住宅ローン控除については、年末時点のローン残高の1%が所得税から控除される制度として紹介されていますが、控除対象となる残高の上限額や適用条件は年度によって変わります。実際に申請する際は、国税庁や住宅金融支援機構の最新情報を確認することをおすすめします。
借り換え・繰り上げ返済・共働き夫婦のローン
住宅ローンの見直し方法としては、より低金利のローンへの「借り換え」、元金を前倒しで返す「繰り上げ返済」、金融機関に直接交渉する「金利交渉」の3つが紹介されています。繰り上げ返済には、返済期間を短くする「期間短縮型」と、月々の返済額を減らす「返済額軽減型」があり、総支払額を減らしたいなら期間短縮型、当面の家計に余裕を持たせたいなら返済額軽減型が向いています。いずれにせよ、繰り上げ返済は貯蓄に余裕がある時に行うのが基本です。
共働き夫婦については、それぞれが住宅ローンを組むことで、2人とも住宅ローン控除を受けられるというメリットが紹介されています。一方で、万一離婚した場合のローンの扱いが複雑になりやすいというデメリットにも触れられており、共働きならではの注意点として参考になりました。
家づくりのコストダウン、保険・年金との付き合い方
第6章は注文住宅でコストダウンを図るためのノウハウが中心で、すでに完成した戸建てやマンションの購入を考えている方には直接関係しない内容も多く含まれます。私自身は完成済み物件の購入を検討していたため、この章はざっと目を通す程度にとどめました。
第7章では、住宅ローンに付帯する団体信用生命保険(団信)について解説されています。団信は、返済者が死亡または高度障害状態になった際に残債がゼロになる保険で、保険料は通常ローン金利に含まれているため別途の支払いは不要です。団信は「遺族にローンを残さないための保険」、一般の生命保険は「遺族のその後の生活を保障するための保険」と、目的が異なる点を理解した上で、保険全体の見直しを行うべきだという指摘は、今読み返しても納得感があります。
このほか、火災保険は建物と家財を分けて契約すること、地震保険は火災保険とセットで加入できること、確定申告では住宅ローン控除以外にも医療費控除や雑損控除などが利用できることなどが紹介されています。住宅資金の贈与税の非課税制度については、本書執筆時点の期間(2015年〜2019年)が記載されていますが、この特例は延長・改正を繰り返しており、現在も形を変えて継続しています。利用を検討する場合は、その年度の最新の制度内容を必ず確認するようにしてください。
第8章では、団信に加入することで保障内容が過剰になりがちな保険の見直しや、公的年金に頼り切らない老後資金づくりの必要性について触れられています。リバースモーゲージ(不動産を担保にして資金を借り、生存中は利息のみ支払い、死亡後に売却して一括返済する高齢者向けローン)や、ホームエクイティローンといった「家を担保にお金を借りる」仕組みも紹介されており、こんな方法もあるのかと驚かされました。
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読み終えての感想まとめ
『マイホームのお金: 知ると知らないで一千万この差はでかい!!』というタイトルから受ける印象ほど、本書を読むだけで簡単に1,000万円得をする、ということはないでしょう。ただし、住宅ローンの種類や返済方法の違い、共働き夫婦が住宅ローンを組む際の注意点、親から資金援助を受ける際に気をつけたいポイントなどは、いずれも実践的で、マイホーム購入を検討するうえで知っておいて損はない内容です。
一方で、日々の家計の節約術については、やや一般論にとどまる印象も受けました。それでも、インパクトのあるタイトルとは裏腹に、マイホーム購入の基本を地に足をつけて学べる一冊だと思います。本書が書かれた2016年と比べ、2026年は住宅ローン金利が上昇局面に入っているからこそ、こうした基礎知識の重要性は増していると感じます。

