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『不動産の落とし穴にハマるな!』要約と感想|マイホーム購入で陥りやすい心理の罠とは

畑中学さんの著書『不動産の落とし穴にハマるな! マイホームや投資で失敗しないための心理学入門』を読みました。結論からいうと、不動産は人生で最も高額な買い物のひとつでありながら、「衝動買い」「申し込み後の即キャンセル」など、合理的とは言えない判断で売買が決まってしまうケースが意外と多い、というのが本書の出発点です。心理学や行動経済学の知見をベースに、不動産売買で足をすくわれやすい「思考のクセ」を、著者自身の事例を交えて解説してくれる一冊でした。

タイトル:不動産の落とし穴にハマるな! マイホームや投資で失敗しないための心理学入門
著者:畑中学
初版発行:2014年9月

不動産は最も高額な商品であるにもかかわらず、合理的ではない判断で売り・買いが決められるケースが多く、結果として高額のローンを払いきれずに破産に追い込まれたり、不満を抱えながら住み続けたりする購入者が多数存在する。また、購入者が数年後に売る側になると、愛着ゆえに相場観を無視した価格を設定し、売りそびれるケースも後を絶たない。本書は、心理学・行動経済学の知見を取り入れながら、不動産売買で陥りやすい「落とし穴」とその背後にある思考パターンを、著者が実際に関わった事例とともに解説している。執筆にあたっては、2010年以降に首都圏で住宅を購入した1,000世帯へのアンケート調査も実施されており、客観的なデータに基づく内容になっている。

以下では、本書の目次に沿って、内容の要約と私自身の感想をまとめていきます。

第1章 不動産を買うときの「感情」の罠

「今の住まいから抜け出したい」で買ってはいけない

不動産購入の動機は、多くの場合「今の状況を変えたい」という欲求から生まれます。しかし、その欲求にとらわれすぎると、理想的に見える物件に惑わされてしまいがちです。「なぜ買い替えたいのか」という本来の購入動機を見失わずに物件を選ぶことが大切だと指摘されています。

家を見終わる前に7割方決めている?-「バルコニー決断の法則」

不動産の購入は、案外直感で決めてしまうことが多いそうです。だからこそ、最初から自分たちの身の丈に合った条件の物件だけを見るようにすることが、結果的に失敗を減らすことにつながります。

申し込み後にすぐキャンセルしてしまう心理

申し込み直後にキャンセルしてしまう原因の多くは、直感と勢いで決めてしまったことへの後追いの不安です。本書では、こうした不安を防ぐために、身内や信頼できる人に相談したり、知識を増やして不安を解消してから購入を決めることをすすめています。逆に、決断の段階で強い不安が残っているなら、無理に購入を進めない方がよいとも述べられています。

「いい物件」から探し始めてはいけない

マイホーム探しでは、「こんな家に住みたい」という希望(内的要因)が先に立ち、「実際に買えるかどうか」という資金力(外的要因)が後回しになりがちです。本書では、この順序を逆にして、まず自分たちの購入力を把握したうえで、その範囲内で物件を選ぶべきだと説いています。読みながら、まさに自分も希望が先行するタイプだったと気づかされ、考え方を見直すきっかけになりました。

「奥さん主導」になると物件選びはどう変わるか

マイホーム購入では、配偶者(特に妻側)の意見が重視されやすい傾向があるとされ、本書ではその判断基準として「見栄」「清潔感・安心感への意識(中古を敬遠する一因)」「世代による価値観の違い」の3つが挙げられています。一方的に決めつけるような内容にも見えますが、自分の家庭に当てはめてみると、思い当たる節が少なくないのも事実でした。

第2章 価格・交渉で陥りやすい罠

「最初に出会った良い物件」に縛られる「アンカリング」

物件の価格が適正かどうかを客観的に判断する基準はなく、最終的には自分自身の感覚に頼ることになります。このとき注意したいのが「アンカリング」、つまり最初に見た物件を基準として、それ以降の物件を評価してしまう心理です。物件価格の差額は500万円程度までなら受け入れられやすいともいわれます。比較検討は大切ですが、最初の印象に引っ張られすぎないよう、物件の中身をしっかり吟味する、見ていない物件と安易に比較しない、極端な物件は最初から候補から外す、という3点を意識するとよいでしょう。

値引き交渉で「端数」にこだわるのは負け

「3,980万円」のように、価格の端数部分(この場合は80万円)は、もともと値引き用に設定されていることがあります。値引きできたという満足感に紛らわされず、その物件が本当に適正価格かどうかに目を向けることが大切です。

「相場より安すぎる」物件を敬遠しすぎない

価格が高すぎても安すぎても避けてしまう心理は「極端回避性」と呼ばれます。「安かろう悪かろう」という根拠のない不安から、せっかくの掘り出し物を見逃してしまうこともあるため、不安の正体を事前調査ではっきりさせ、リスクを把握したうえで判断することが重要です。

「今しかない」「競合あり」という言葉に急かされない

「希少性」を強調されると、人は冷静さを失って急いで決断しがちです。一方で、競合がいないからといって「悪い物件なのでは」と疑心暗鬼になる必要もありません。状況に流されず、物件そのものの価値を冷静に評価する姿勢が大切です。

複数の物件はどの順番で見るべきか

汚れた物件を見たあとにきれいな物件を見ると、実際以上に良く見えてしまうことがあります。また、判断に迷いがあるほど、後半に見た物件で決めてしまう傾向もあるそうです。見る順番に左右されず、物件ごとの内容を一つひとつ吟味することが求められます。

不動産会社の営業担当者との付き合い方

良い物件に出会うためには、営業担当者との関係づくりも欠かせません。予算や間取りの希望をできるだけ具体的に伝え、連絡には早めに返信するなど、自己開示を高めることで信頼関係が築きやすくなります。一方で、過度にしつこい、あるいはビジネスライクな対応が期待できない相手とは、無理に付き合いを続けない方がよいでしょう。

第3章 物件選びの「思考」の罠

物件を見すぎると決められなくなる「見学漂流者症候群」

多くの物件を見すぎると、選択肢が増えすぎてかえって決められなくなってしまいます。そこで役立つのが「フレーミングの法則」です。価格や立地など、最低限譲れない条件で先に「枠(フレーム)」を作ってから物件を見ることで、迷いを減らすことができます。

条件を絞っても希望物件に出会えないとき

フレームを厳しく設定しすぎると、今度は逆にいつまでも物件が決まらなくなることがあります。そんなときは、一度外した条件を見直し、フレームを広げる柔軟性も必要です。条件を緩めたことで、以前は候補から外れていた物件の中から良い出会いが見つかることもあります。

「わかりやすい物件」だけでは良い物件をつかめない

メリットが分かりやすい物件ばかりに目が行くと、一見地味でもメリットが隠れている物件を見逃してしまうことがあります。こうした「限定合理性」のワナを避けるには、自分自身の知識を広げ、物件の本質的な価値を見抜けるようにしておくことが大切です。

物件探しは「期間限定」で進めるのが吉

物件を見た数や、かけた時間の長さは、必ずしも満足度にはつながりません。本書では、目安としておよそ3か月程度の期間を区切り、その間に見つからなければエリアや条件自体を見直すという進め方が提案されています。

「せっかくだから」のオプション追加に潜むワナ

購入が決まると気が大きくなり、「せっかくだから」とオプションを追加しがちですが、積み重なると予算を大きく超えてしまうことがあります。「将来なんとかなるだろう」という希望的観測で、支払い能力を超えた選択をしないよう注意が必要です。

第4章 不動産を「売るとき」の罠

本書の後半では、購入した不動産をいずれ売る側になったときの注意点もまとめられています。新築物件は中古に比べて3〜4割ほど価格が上乗せされる「新築プレミアム」が日本特有の感覚としてある一方、自分の家を売るときには、愛着から相場より高く評価してしまう「保有効果」に注意が必要だと指摘されています。

また、売り出してもなかなか売れない場合は、自分自身の価格設定(売主アンカリング)を疑ってみること、長期間売れ残っている物件は「問題物件」と見られやすいこと、似たような物件の中で埋もれないよう特徴をアピールすることなどが、売却を成功させるポイントとして挙げられています。逆に、売り出してすぐに買い手が現れたケースを「安すぎたのでは」と疑って見送ってしまう「売主プロスペクト理論」にも注意が必要です。

読んでみての感想

マイホームを購入した人の話を聞くと、物件探しを始めてから契約までが意外と短いことを不思議に思っていましたが、本書を読んで、その理由の一端が分かった気がします。購入時の心理状態の変化を理論立てて説明している本は、自分にとって新鮮で、読み物としても単純に面白く感じました。

こうした心理的なクセを知っておくことで、実際の購入時に必ず冷静な判断ができるとは限りませんが、自分を一歩引いた視点で見る材料にはなるはずです。「お得な住宅ローンの組み方」のようなハウツー本とは違う角度から、マイホーム購入を見つめ直したい方におすすめの一冊です。

マイホーム購入に関する本のレビューは、ほかにも書いています。あわせてご覧ください。

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