
宮尾登美子原作映画5選|夏目雅子・十朱幸代らが着物で魅せた名場面
遊郭・侠客・愛憎・歴史をテーマにした作品で知られる宮尾登美子さんの小説は、これまで数多くの映画として世に送り出されてきました。
五社英雄監督作をはじめとする作品群では、夏目雅子さんや十朱幸代さんら名女優たちが、時代を映す着物姿で鮮烈な女性像を演じています。
今回は宮尾登美子原作映画の中から、着物姿が印象的な5作品を紹介します。
昭和の映画に息づく着物文化の奥深さを、名場面とともに振り返ってみましょう。
目次
この記事の要点
- 宮尾登美子原作映画は、遊郭・侠客社会を舞台に着物姿の女性群像を描いてきた
- 『鬼龍院花子の生涯』の夏目雅子はこの作品でスター女優への道を切り開いた
- 『陽暉楼』では池上季実子と浅野温子による壮絶な乱闘シーンが話題になった
- 『櫂』『夜汽车』『寒椿』にも、時代を映す着物姿の名女優たちが登場する
「鬼龍院花子の生涯」夏目雅子の喪服姿と啖呵
1982年公開の「鬼龍院花子の生涯」は、宮尾登美子さんの故郷である土佐の侠客社会を下敷きに、五社英雄監督が家父長制の下で抑圧される女性の姿を描いた作品です。
貧困家庭で育った松恵を演じた夏目雅子さんが、喪服姿で「あては鬼政の娘じゃき。なめたらいかんぜよ!」と啖呵を切る場面は、多くの人の記憶に残る名シーンです。
普段は物静かな女性が大きな感情を発露するこの場面は、着物姿だからこそ際立つ緊張感を持っています。
本作で一躍スター女優となった夏目さんは、その後「魚影の群れ」や「瀬戸内少年野球団」など、今なお語り継がれる作品に出演していきました。
「陽暉楼」池上季実子と浅野温子の乱闘シーン
1983年公開の「陽暉楼」は、西日本一を誇る土佐の料亭を舞台に、そこで繰り広げられる人間模様を描いた作品です。
女義太夫・呂鶴とその娘・桃若の二役を演じた池上季実子さんと、勝造の愛人・珠子を演じた浅野温子さんによる、ダンスホールのトイレでの壮絶な乱闘シーンが大きな話題を呼びました。
五社監督は撮影前に「どちらが主役かはできあがった映画が決めてくれる」と、お互いの感情を煽ってこのシーンを撮ったといわれています。
「鬼龍院」で夏目雅子さんがスターになったことで、女優たちが五社作品への出演を熱望するようになった時代背景も、本作の見どころのひとつです。
「櫂」十朱幸代が演じた慈母のような妻
1985年公開の「櫂」は、宮尾さんの出世作であり、長らく語らずにいた生家の家業を取り上げ、太宰治賞を受賞した原作をもとにした作品です。
土佐の遊郭で女衒をしている夫の子を、我が子以上の愛情で育てる妻・喜和を演じた十朱幸代さんは、本作が代表作となりました。
血の繋がっていない子を実の子のように可愛がる着物姿の慈母の姿は、男社会の論理に翻弄されながらも自ら道を切り開く女性像として描かれています。
作中の少女は宮尾さん自身がモデルとされており、宮尾さんが作家になるまでの道のりを描いた自伝的な三部作の掉尾を飾る作品でもあります。
「夜汽車」秋吉久美子と萩原健一が見せた着物姿の名シーン
1987年公開の「夜汽車」は、土佐の裏社会の抗争を背景に、姉妹が同じ男を好きになってしまう愛憎を描いた作品です。
秋吉久美子さんと萩原健一さんが川沿いを着物姿で歩くシーンは、まるで一幅の絵画のように美しいと評されています。
庭で征彦が里子の髪を洗い、里子が征彦の髭を剃刀で剃るという場面など、古き良き時代を感じさせる描写も本作の魅力です。
1970年代に「しらけ世代」のアイコン的存在だった2人が、80年代に入り役の幅を広げていく過程を象徴する作品としても位置づけられています。
「寒椿」南野陽子が挑んだ芸妓役
1992年公開の「寒椿」は、売られてきた4人の娘たちが荒波に飲み込まれる運命をオムニバスで描いた原作をもとにした作品です。
高知の妓楼「陽暉楼」で売れっ子芸妓となる貞子を演じたのは、当時トップアイドルだった南野陽子さんです。
誰もが褒めそやす美しい芸妓姿の南野さんは、本作で初めての大胆なシーンに挑戦し、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞しました。
トップアイドルが演じる脆く儚げな芸妓姿は、着物という装いが持つ表現の幅の広さを象徴する名演といえるでしょう。
まとめ
宮尾登美子さん原作の映画5作品は、いずれも着物姿の女優たちが時代の女性像を鮮烈に演じてきた作品ばかりです。
遊郭や侠客社会という重厚な舞台設定の中で、着物という装いが持つ表現力を存分に引き出した名場面の数々は、今見返しても色あせない魅力を持っています。
着物文化に興味がある人は、こうした昭和の名作映画から鑑賞してみるのもおすすめです。

