視点・論点「裁量労働制の行方」内容は?2026年見直し・対象拡大と課題を解説|8/12 12:50

2026年8月12日(水)12時50分からNHK Eテレで、『視点・論点 選 裁量労働制の行方』が放送されます。解説は、労働法を専門とする早稲田大学教授の水町勇一郎さんです。

政府が7月21日に閣議決定した「骨太方針2026」では、裁量労働制について、健康確保や長時間労働防止、適切な処遇の確保などを前提に、対象のあり方を見直す検討を行う方針が示されました。

ただし、2026年8月8日時点で対象業務の拡大が決まったわけではありません。この記事では、番組の放送情報に加え、「裁量労働制とは何か」「誰が対象なのか」「残業代はどうなるのか」「なぜ2026年に再び見直しが議論されているのか」をわかりやすく整理します。

視点・論点「裁量労働制の行方」の放送情報

番組名視点・論点 選 裁量労働制の行方
放送局NHK Eテレ1・東京
放送日時2026年8月12日(水)12:50~13:00
解説水町勇一郎(早稲田大学教授・労働法)
主なテーマ裁量労働制の仕組み、対象業務、2026年の見直し議論、長時間労働防止と処遇

同じタイトルの回は2026年7月28日に放送されており、8月12日は「選」として放送予定です。短い番組ですが、制度の基本と見直しの争点を10分で確認したい人に向いた内容です。

結論|2026年に裁量労働制はどう変わる?

  • 対象拡大はまだ決定していない:骨太方針2026は「見直しの検討」を示した段階
  • 拡大だけが論点ではない:健康確保、長時間労働防止、適切な処遇、本人の裁量をどう担保するかがセット
  • 現行制度はそのまま有効:法令や省令などが改正されるまでは、現在の対象業務・導入手続に従う
  • 2024年改正の検証も重要:本人同意や同意撤回などを含む改正後の運用実態が議論の材料になる

今回のポイントは、「裁量労働制を広げるか、広げないか」という二択ではありません。本当に仕事の進め方や時間配分を自分で決められる人に限れるのか、働き過ぎをどう防ぐのか、成果や責任に見合った賃金をどう確保するのかまで含めて制度設計が問われています。

裁量労働制とは?「何時間働いても同じ」ではない

裁量労働制は、業務の性質上、仕事の進め方や時間配分を労働者の裁量に大きく委ねる必要がある場合に、実際に働いた時間ではなく、労使であらかじめ定めた「みなし労働時間」を働いたものとして扱う制度です。

制度には大きく、研究開発、情報システムの分析・設計、デザイン、取材・編集などを対象とする専門業務型と、企業の中枢部門で企画・立案・調査・分析を行う労働者を対象とする企画業務型があります。

専門業務型は2024年4月の改正で対象が20業務となり、導入・継続時には本人同意や同意を撤回する手続なども必要になりました。会社が「裁量労働制です」と一方的に決めれば誰にでも適用できる制度ではありません。

骨太方針2026は何を見直す?対象業務と濫用防止が焦点

政府はAIの社会実装や創造的な仕事の増加を背景に、現在の対象業務が実際の働き方に合っているかを検討しています。日本成長戦略会議では、企画職などで成果が労働時間に比例しにくい仕事が増えているとして、対象業務の拡充を求める意見が出ました。

一方、骨太方針2026は単純な規制緩和とはしていません。健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、対象のあり方を見直すという書き方です。

つまり、対象職種を増やすとしても、「名ばかり裁量」で上司から業務量や締め切りを細かく指示され、実際には自由に働けない人まで制度に入ることをどう防ぐかが大きな争点になります。

労使の意見はなぜ割れる?メリットと懸念を整理

使用者側からは、仕事の性質によっては「何時間会社にいたか」より成果や役割で評価した方が合うこと、柔軟な時間配分が生産性や創造性につながることなどが期待されています。

一方、労働者側からは、業務量を自分で決められないまま裁量労働制だけが適用されると、長時間労働や実質的な残業代削減につながるのではないかという懸念が示されています。

厚生労働省の労働政策審議会でも、制度が適切に運用されればメリットがあるという意見と、2024年改正後の実態をまず検証すべきだという慎重論の両方が出ています。制度の評価には、「裁量があるか」「労働時間が長くなっていないか」「処遇が妥当か」を同時に見る必要があります。

裁量労働制でも残業代は出る?よくある誤解

「裁量労働制なら残業代が一切出ない」という理解は正確ではありません。たとえば、1日のみなし労働時間を法定労働時間の8時間より長く設定する場合、その法定時間を超える部分には36協定や割増賃金が関係します。

また、深夜労働や法定休日労働は裁量労働制でも別扱いで、実際の勤務に応じた割増賃金が必要です。一方、通常の所定労働日に実労働がみなし時間を上回ったからといって、その差がそのまま時間外手当になる制度ではありません。

給与計算や適用条件は個別の労働契約、労使協定・労使委員会決議、勤務状況によって変わるため、具体的なケースは会社の就業規則や労働条件通知書を確認し、必要に応じて労働局・労働基準監督署などの公的窓口へ相談するのが確実です。

2024年改正で何が変わった?本人同意と撤回が重要

2024年4月から、専門業務型裁量労働制では、制度を適用する本人の同意を得ることや、同意を撤回する手続を定めることが新たに求められました。同意しなかったことや撤回したことを理由とする不利益な取り扱いをしないことも制度上の重要なポイントです。

企画業務型でも以前から本人同意が必要です。2026年の見直しを考えるうえでは、対象を広げる前に、こうした仕組みが職場で実際に機能しているかの検証が欠かせません。

厚生労働省は2026年7~8月に、裁量労働制を導入している事業場や労働者などを対象に、2024年改正後の運用、本人同意・撤回、健康・福祉確保措置、実際の裁量の程度などを把握する調査を行う計画を示しています。

解説者・水町勇一郎とは?労働法の専門家

水町勇一郎さんは1967年生まれ。東京大学法学部を卒業し、東京大学社会科学研究所教授などを経て、2024年4月から早稲田大学法学学術院・法学部教授を務めています。専門は労働法で、労働法の歴史・理論や比較研究を研究テーマとしています。

著書には『労働法』『詳解 労働法』『労働法入門』などがあり、働き方改革や労働法制に関する政府の会議にも関わってきました。今回の番組では、制度の賛否だけでなく、労働法がなぜ「自由な働き方」と「働く人の保護」の両方を考える必要があるのかという視点が注目されます。

2026年の働き方を考える関連記事

裁量労働制の議論は、賃金や勤務場所など「働き方をどう設計するか」という大きな流れの一部です。賃金面では、最低賃金2026はいつ決まる?東京・神奈川・千葉の現在額と時給1900円試算もあわせて確認すると、2026年の雇用政策を立体的に見られます。

勤務場所をめぐる企業の動きでは、GMOが在宅勤務を完全廃止した理由は?原則出社の経緯とリモートワークの今後で、柔軟な働き方と企業側のマネジメントのバランスを整理しています。

よくある質問

視点・論点「裁量労働制の行方」はいつ放送?

2026年8月12日(水)12時50分から13時まで、NHK Eテレ1・東京で放送予定です。

8月12日の放送は再放送?

番組名に「選」とあり、同タイトルの回は2026年7月28日に放送されています。8月12日はその内容を選んで放送する枠です。

裁量労働制の対象拡大は決まった?

2026年8月8日時点では決まっていません。骨太方針2026で、濫用防止措置を前提に対象のあり方を見直す検討方針が示された段階です。

専門業務型裁量労働制は何業務が対象?

2024年4月施行の改正後は20業務です。研究開発、情報処理システムの分析・設計、取材・編集、デザインなど、法令・告示で定められた業務に限られます。

裁量労働制なら残業代はゼロ?

一律にゼロではありません。みなし労働時間が法定労働時間を超える場合の割増賃金や、実際の深夜・法定休日労働に対する割増賃金などが必要です。

裁量労働制への同意を断ったり撤回したりできる?

専門業務型では2024年4月から本人同意と同意撤回の手続が必要になりました。企画業務型でも本人同意が必要です。

まとめ|注目は「拡大」より裁量と健康をどう守るか

『視点・論点 選 裁量労働制の行方』は、2026年の骨太方針をきっかけに再び注目される裁量労働制について、制度の基本と今後の論点を考える回です。

焦点は対象業務を広げるかどうかだけではありません。本人に本当の裁量があること、長時間労働を防ぐこと、健康を守ること、仕事に見合った処遇を確保することをどう制度として両立させるのか。水町勇一郎教授の解説を聞く前に、この4点を押さえておくと番組の論点がつかみやすくなります。

参考情報

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