GMOが在宅勤務を完全廃止した理由は?原則出社の経緯とリモートワークの今後

GMOインターネットグループが、コロナ禍以降続けてきた在宅勤務の推奨を2026年7月13日付で完全に廃止したと発表しました。2020年1月に約4000人規模で在宅勤務へ切り替えた「早い対応」で知られたIT企業だけに、「なぜ廃止した?」「社員は全員毎日出社?」「他社もリモートワークをやめる?」と関心が集まっています。

GMOは2023年に週2日在宅勤務の推奨をやめて原則出社へ移行し、その後も残していた週1日の在宅勤務推奨を今回終了しました。この記事では、完全廃止までの経緯、熊谷正寿代表が示した根拠、原則出社と在宅禁止の違い、企業と働く人への影響を整理します。

個別の雇用契約、障害・育児・介護への配慮、各グループ会社の運用は一律とは限りません。勤務条件については会社の人事規程や本人への案内を確認する必要があります。

この記事の要点

  • 2020年1月、感染対策として大規模な在宅勤務を開始
  • 2023年2月に週2日在宅推奨を廃止し原則出社へ
  • 2026年7月13日付で残っていた週1日在宅推奨も終了
  • 熊谷代表は「タイピング数の減少」を根拠に「トータルでマイナス」と説明
  • 2026年の国内調査でも週5出社は約半数、完全リモートは大きく減少傾向
  • 在宅勤務制度の存在と会社としての「推奨」は同じではない

GMOはなぜ在宅勤務を完全廃止した?

熊谷代表がXで説明、タイピング数データが根拠

GMOインターネットグループの熊谷正寿代表は、グループとして推奨してきた在宅勤務を7月13日付で完全廃止したと、自身のXアカウントで説明しました。コロナ禍の収束後も、採用や従業員のQOLを考慮して週1日の在宅勤務を認めてきましたが、その「グループとしての推奨」を終えた形です。

熊谷氏が挙げた根拠の一つが、在宅勤務では時間当たりのパソコンのタイピング数がデータ上確実に減っているという点です。「在宅で生産性が上がる方もいる。否定しない」と一定の理解を示しつつも、全体で見ればマイナスに働くという判断を示しました。背景にはAIの急速な進化があるとみられ、「人類最大の産業革命の真っ只中。負ける要素は排除する」とも述べています。

報道で確認できる説明は、この制度変更の経緯が中心です。個別の社員の働きぶりを名指しして廃止の理由にしたわけではなく、あくまでグループ全体のデータに基づく判断として示されています。

2023年から原則出社に戻っていた

GMOは2023年2月、新型コロナ対策の完全撤廃に伴い、それまでの「週3日出社・週2日在宅勤務」という推奨体制をやめ、グループ各社で出社勤務を原則としました。

当時の公式発表では、全員がオフィスで顔を合わせることでコミュニケーションを円滑にし、サービス提供につなげる考えが示されています。一方で、より高い成果を出すための手段や、オフィス賃料削減などを目的とした計画的な在宅勤務の活用は可能としていました。今回の変更は、原則出社へ切り替えた後にも残っていた週1日の在宅勤務推奨を終了したという流れです。

グループ企業数・従業員規模の大きさ

GMOインターネットグループは、インターネットインフラ、ネット広告・メディア、暗号資産、金融といった幅広い事業を展開する企業グループで、国内外に多数のグループ会社を持ちます。2020年1月の在宅勤務移行時には約4000人規模が対象となっており、今回の完全廃止もグループ全体に影響する規模の方針転換です。

これだけの規模の企業が明確な方針転換を打ち出したことで、同業他社の経営判断にも一定の影響を与える可能性があります。IT業界内での位置づけが大きいだけに、今回の発表が注目度の高いニュースとして扱われた背景には、こうした事情もあると考えられます。

「在宅勤務完全廃止」は全員が例外なく出社?

ニュース見出しの「完全廃止」は強い表現ですが、公開情報から個別の例外や各社の規程まで断定することはできません。会社として推奨する標準的な働き方と、個別事情に基づく在宅勤務、業務命令としての在宅、採用時に合意したリモート契約は区別する必要があります。

育児や介護、障害、治療、災害、感染症、出張などへの対応は、就業規則や労使協議、法令上の配慮によって決まります。「推奨廃止」という発表だけで、すべての例外がなくなったと判断しないほうがよいでしょう。GMOグループで働く人や応募者は、所属会社、職種、雇用形態ごとの勤務条件を人事へ確認する必要があります。

企業が出社回帰を選ぶ主な理由

相談と意思決定の速度

対面では、短い相談、周囲の反応、会議後の確認など、予定されていないコミュニケーションが起きやすくなります。ある調査では、出社が必要だと考える理由として「すぐに質問しやすい」が61.4%で最多、「リモートより意思疎通できる」が52.6%と続いており、新規事業や複数部門が関わる仕事で意思決定の速度を重視する企業が多いことがうかがえます。

新人育成と組織文化

入社直後の社員は、文章化されていない仕事の進め方や、困ったときの相談相手を把握しにくいことがあります。出社によって先輩の仕事を観察し、細かいフィードバックを受けやすくする狙いがあります。

評価・セキュリティ・設備

成果を数値化しにくい職種では、在宅勤務の評価制度を設計するのが難しい場合があります。また、機密情報、大容量回線、専用端末、複数人で使う設備など、オフィスのほうが扱いやすい業務もあります。

ただし、これらは出社すれば自動的に解決する問題ではありません。出社しても会議が多すぎる、質問しにくい、評価基準が曖昧といった状態なら、生産性は上がりません。

在宅勤務を残すメリット

通勤負担と生活の両立

在宅勤務では通勤時間を減らせるため、育児、介護、通院、家事との両立がしやすくなる人がいます。長距離通勤の疲労を減らし、集中作業に使える時間を確保できる点もメリットです。

採用できる地域と人材が広がる

勤務地を限定しなければ、地方在住者や転居が難しい人も採用候補になります。専門人材が不足する職種では、フルリモートやハイブリッド勤務が採用競争力になる場合があり、ある調査では完全出社が必須になった場合に62%の従業員が離職を検討するというIT企業の実態も報告されています。

災害や感染症への事業継続

全社員が日常的に在宅勤務できる環境を持っていれば、台風、地震、交通障害、感染症流行時にも業務を継続しやすくなります。GMOが2020年に早期の在宅勤務へ移行したのも、従業員の安全確保と事業継続の意味がありました。

2026年の出社回帰、他社はどうなっている?

GMOの判断は一社の方針にとどまらず、国内で広がる出社回帰の流れの一例でもあります。Job総研が2026年に実施した調査では、勤務先で出社回帰が「あった」と答えた人が20.2%、前年度から継続して出社しているとする層も30.9%に上り、出社頻度は「週5日」が48.3%と約半数を占めました。

別の調査によると、2025年のテレワーク実施率は22.5%で前年からほぼ横ばいですが、「完全リモート」の割合は30%から10%へ急減し、「完全出社」は25%にとどまっています。多くの企業は在宅か出社かの二択ではなく、出社と在宅を組み合わせたハイブリッド勤務という中間的な形に落ち着いている実態が見えてきます。

GMOのように在宅勤務の推奨を完全にやめる企業がある一方で、管理部門・士業を対象にした別の調査では6割がフル出社と回答しつつも、週半分以上リモート可能な会社も2割存在するなど、業種や職種によって出社回帰の温度差は大きいのが実情です。

今後リモートワークはなくなる?

GMOの判断は注目度が高いものの、一社の方針だけで日本全体の在宅勤務が終わるとは言えません。仕事内容、企業規模、採用市場、オフィス費用、顧客対応によって最適な形は異なります。

完全出社へ戻す企業がある一方で、週2~3日のハイブリッド勤務、遠隔地からのフルリモート、部署ごとの選択制を続ける企業もあります。今後は「在宅か出社か」という二択より、どの業務をどこで行うと成果が高いかを細かく決める方向が重要になります。

AIやクラウドツールが普及しても、コミュニケーションや評価の設計が不要になるわけではありません。ツールを導入するだけでなく、目標、権限、連絡時間、会議のルール、情報管理を整える必要があります。熊谷氏の発言のように、AIの進化を出社回帰の理由に挙げる経営者が今後増えるかどうかも注目される点です。

求職者・転職検討者にとっての意味

働き方の方針は、転職や就職活動をする人にとっても重要な判断材料です。ある調査では、完全出社が必須になった場合に62%の従業員が離職を検討するという結果も出ており、企業側にとって勤務形態の方針は採用競争力に直結するテーマになっています。

一方で、GMOのように明確な方針転換を打ち出す企業に魅力を感じる求職者もいます。「出社を前提にした働き方を歓迎するか」「在宅勤務の柔軟性を重視するか」は個人の価値観によって異なるため、求人情報を見る際は勤務形態の記載を必ず確認しておきたいところです。

社員側が確認したいポイント

  • 出社日数と在宅勤務の申請条件
  • 交通費・定期代・在宅手当の変更
  • 育児・介護・障害など個別事情への制度
  • 転居済み社員や遠隔地採用者への経過措置
  • 評価基準と勤務時間の扱い
  • 災害時・体調不良時の在宅勤務可否

制度変更は生活設計に直結します。口頭の説明だけでなく、就業規則、社内通知、雇用契約の変更点を確認し、不明点は人事へ記録が残る形で質問するとよいでしょう。

まとめ

GMOインターネットグループは、2023年に原則出社へ移行した後も続けていた週1日の在宅勤務推奨を、2026年7月13日付で終了しました。熊谷代表はタイピング数の減少データを根拠に「トータルでマイナス」と説明しており、2020年の大規模な在宅勤務開始から約6年半で、大きな区切りとなります。

ただし、今回の判断だけで「在宅勤務は失敗」「すべての企業が出社へ戻る」と結論づけることはできません。国内の各種調査でも、完全出社と完全リモートの両極端ではなく、ハイブリッド勤務が主流になりつつあります。企業は業務内容と働く人の事情を踏まえ、成果を出せる運用を設計する必要があります。

あわせて読みたい

参考情報

このテーマの関連記事はこちら