顧客情報管理システムの導入を検討する前に決めておく2つのこと

会社のウェブ担当者やIT担当者は、上司から「顧客情報管理システムを作って欲しい」と依頼されることがあるかも知れません。しかしこのように丸投げで依頼されると担当社員は困ってしまいます。なぜなら、顧客情報を管理するシステムは、一人の社員が勝手に作ることはできないからです。
記事では、はじめて顧客情報管理システムの導入を検討することになった担当者に向けて、「顧客情報管理とは」「導入のメリット」「実際のツール候補」「事前に決めておくこと」などを解説します。

 

顧客情報管理とは

顧客情報管理とは、顧客の情報を一元管理することです。BtoBであれば企業名や担当者名、会社の所在地や取引実績など。BtoCなら住所、氏名、年齢、誕生日、購入履歴、来店履歴などになります。情報項目は、顧客情報管理を行う企業の業態によるところが大きいでしょう。
煩雑になりがちな個々の情報を、一元管理することで、整理して活用しやすくする目的があります。

顧客情報を管理するメリット

なぜ顧客情報を管理する必要があるのでしょうか。なぜなら情報を有効に活用することで企業の利益向上に役立てることができるからです。

かつて日本は大量生産大量消費の時代がありました。その頃はモノを作った分だけ、どんどん売れていき、企業は業績を伸ばすことができたのです。しかし現代ではそうスムーズにはいきません。消費者は本当に必要なものにしかお金を支払わなくなりました。

その一方で、必要なもの、自分が求めるものに対しては惜しみなくお金を支払う傾向もあります。つまりモノを売るためには需要と供給をマッチングさせなければならない時代になったのです。

企業は、マスに対して手当たり次第に広告を打ってもコンバージョンが上がりません。ユーザーを見極めてピンポイントにPR展開をしなければ、予算の無駄遣いと言われます。この時必要となるのが顧客情報です。

かつて自社の製品やサービスを購入してくれた人は、どのような経緯で購入に至ったのか。どのような家族構成か、職業はなにか。パーソナルな情報を分析することで、消費者のニーズを洗い出すことが必要になります。ニーズが明確になれば、そのポイントに対してスポットを当てて販促活動をすればよいだけです。

このように顧客情報を管理することで、企業がより効果的に製品やサービスを売ることが出来るメリットが生まれます。

顧客情報を管理するツール

顧客情報を管理するツールはさまざまです。導入予算や導入目的、また担当スタッフのITリテラシーによって最適な選択は異なるでしょう。以下では代表的なツールとその特徴をお伝えするので参考にしてください。

Microsoft ExcelやGoogleスプレッドシートなど

いわゆる表計算ソフトを顧客情報管理に使うことができます。具体的にはMicrosoft ExcelやGoogleスプレッドシートなどです。これらのソフトは、企業によっては既に別用途で導入しているケースが多く、新たに顧客情報管理ツールとして採用するには、ハードルが低い特徴があります。

既に導入している企業の場合、低コストが一番のメリットです。ソフト購入費用はもちろん、スタッフの研修費用も抑えることができます。極端な話、入力ルールをペライチでPDFにして担当者へメールで送るだけで完了するかも知れません。

デメリットは、「リアルタイム性の保持」や「同時入力」が難しい点です。例えばExcelの場合、各々のパソコンでファイルをローカル管理するとリアルタイム性に欠けます。そうかと言ってファイル共有やドロップボックスなどのツールを使って、いつでもだれでも見られるようにすると、同時入力が難しいでしょう。もちろんExcelの設定で同時入力できるようになりますが、バッティングした場合、一方の入力内容は破棄されてしまうので適していません。

「変更履歴の保存」も難しいと言われていますが、ドロップボックスを利用したり、Google Driveを利用したりすることで対応ができます。しかし、使い慣れない人には難しいかも知れません。

CRM(顧客情報管理システム)

無料から有料までCRM(顧客情報管理システム)は様々あります。それぞれ特徴が異なるので一概に言えませんが、総じて顧客情報の管理に特化していることがメリットです。最初から必要な機能は、ほぼ揃っています。

一方、カスタマイズが難しい点は否めません。企業によってニーズは異なるので、やりたいことを100%実現できるシステムを探すことが必要です。その調査労力もコストに含めて考える必要があります。そのため実現するまでには時間がかかることもあるのです。

CMSや会計ソフト

顧客情報管理がメイン機能ではありませんが、実際には行えるツールがあります。EコマースのCMS「EC-CUBE」やWordPressのプラグイン「Welcart」では顧客情報を管理できます。会計ソフトも企業情報を一元管理できる機能が備わっている場合もあるのです。
これらの機能を利用して顧客情報を管理することもできます。

顧客情報管理システムの導入前に決めておく2つのこと

顧客情報管理システムを導入するのは、割と重いタスクだといえます。予算がかさむ場合もあるし、社内のニーズを取りまとめるのは一苦労です。顧客情報管理システムの構築には、経営的視点、マーケティング的視点、実際に現場で扱うスタッフの視点が必要になります。
その際、ポイントを絞らないと振り回された挙げ句、結局決まらないということにもなりかねません。

ポイント1_用途(使用目的)

「顧客情報を一元管理すると何でも出来る」と思っている経営者は多いです。そのため、すべての情報を管理したいと望む傾向があります。しかし「情報を管理すること」が第一目的になってしまうと本末転倒です。

情報は活かしてなんぼ、です。活用方法も思い当たらないのに、数百万円かけてシステムを作っても猫に小判でしょう。そのような場合はたいてい、継ぎ足しでカスタマイズすることになり、かえって使いにくいシステムが出来上がることが常です。喜ぶのはシステム構築会社だけでしょう。

小規模な企業ほど、目的意識を持つことが大事。顧客情報の用途(使用目的)は最初に決めておくほうが無難です。そして目的のために必要な情報だけを最小限に扱うようにしましょう。

ポイント2_システムを使う人を限定する

いくら立派な顧客情報管理システムを構築したとしても、それを扱うのは営業担当や店舗スタッフなど現場の人間です。彼らはITのスペシャリストではないので、あまり複雑な仕様では困ります。

また、誰もが扱えるシステムを構築することが理想ですが、コスト的にも限界があるはず。そんなときには実際に操作する人を限定するとイメージが沸きます。その人のスキルに見合ったシステムを作れば良いので、より具体的な構築が可能です。
部署ごとにパソコン操作が得意な人を数人ずつ選び、彼らのITスキルをフラットに保つと良いでしょう。

顧客情報管理システムの構築は根気が必要

顧客情報管理システムを構築するには、「システムの限界」と「人間のニーズ」を両立させなければなりません。そのため、調査やヒアリング、構築まで考えると長期のタスクとなる可能性があります。
だれもが満足できる顧客情報管理システムを構築するには、焦りは禁物です。十分に検証を重ねて、一歩ずつ根気よくすすめることが必要です。

 

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