住宅取得資金贈与の非課税特例を簡単に理解するコツと最低限の礼儀

マイホーム購入にはまず貯金、と思う人が多いと思いますが、まとまった金額を貯めるには時間がかかってしまいます。

最近では、全額ローンで購入することもできますが、フルローンだと返済計画に無理が出てくることも。

そんな時、頼りになるのはご両親などです。

しかし、もし親がお金の援助をしてくれる幸運な立場だとしても、決められれたルールに則ってお金を受け取らないと損することにもなりかねません。

 

損と言うのは、贈与税のこと。

親が住宅購入資金の援助をしてくれると言っても、何も考えずにお金をもらってしまうと、多額な贈与税を支払う事になります。

ところが、あるルールに則って援助を受けることで、贈与税を支払う必要がなくなる制度があります。

それが、住宅取得資金贈与の非課税特例です。

制度のあらまし

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。

引用:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm

要するに、マイホームを購入するために親から資金援助を受けるときには、住宅取得資金贈与の非課税特例の制度を利用しないと損(贈与税の支払い)をしてしまうということです。

では、この制度を使うことで、いくらまで贈与が非課税になるか見ていきます。

住宅取得資金贈与の非課税特例について001
今年(平成29年/2017年)なら700万円まで非課税!

普通、親子の関係でもお金をもらうと贈与税がかかることは前述のとおりです。

住宅取得資金贈与の非課税特例を使わない場合、例えば1000万円の贈与を受けとると177万円くらいの贈与税を、お金をもらった子どもが支払う必要が出てきます。

つまり、実質的に親があげるお金が減ってしまうということになるのです。

特に住宅購入資金の場合、親からの援助金額も多額になりがちなので、贈与税の額も大きくなります。

親からお金をもらっただけで、数十万~数百万円の税金がかかるということは、貰った子どもはもちろん、あげた親も損した気分になってしまうでしょう。

そこで、ぜひ利用したいのが住宅取得資金贈与の非課税特例

この制度は時限立法と言う形での制度なので、数年間しか利用することができませんし、非課税額の上限も年月が経つほど減っていきます。

平成29年(2017年)の今年なら、700万円が非課税となります。(省エネ等住宅以外の場合)

非課税限度額

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
平成28年1月1日~平成32年3月31日 1,200万円 700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1,000万円 500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 800万円 300万円

引用:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm

ちなみに、消費税が10%に上がるタイミングで、上記一覧は変更になる予定です。

どちらにしても、数百万から数千万単位の贈与が非課税になる住宅取得資金贈与の非課税特例は利用しない手はありません。

住宅取得資金贈与の非課税特例について002
制度利用のための8つの条件を確認する

住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるためには、以下の条件をすべて満たさなければなりません。

※下記引用部分の参照URL:引用:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm

(1) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。
(注) 配偶者の父母(又は祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。

直系卑属や直系尊属など、普段聞き慣れない言葉が出てきますが難しく考える必要はありません。

基本的には血のつながりのある親や祖父母からしか贈与は受けられないということと思ってください。(養子縁組は例外)

例えば、マイホーム購入者名義を夫だけにした場合、夫の両親からの援助にしか住宅取得資金贈与の非課税特例は利用できません。

逆に考えれば、夫婦2人の名義で購入すれば、それぞれの親から援助を受けても、それぞれに住宅取得資金贈与の非課税特例が適用されます。

(2) 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。

読んで字のごとく、お金をもらう方が未成年の場合は利用できない制度です。

(3) 贈与を受けた年の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。

所得金額2000万円というと、そこそこのお金持ちですので、親から援助を受ける必要もないかもしれません。

(4) 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。

一定期間の過去の間に、同様の非課税特例を受けている方は、対象外となります。

そもそも、短期間に2回以上マイホームを買う人も少ないと思うので、一般的にはあまり関係ないですね。

(5) 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。

自分の身内間での取引には、適用できないということです。

(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
(注) 受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含まれます。)ことにならない場合は、この特例の適用を受けることはできません。

基本的なことですが、住宅取得資金贈与の非課税特例はマイホーム購入資金としてしか適用されません。

親からもらったお金を、一部でも他の用途に使うと、制度が適用されないということです。

もらった全額マイホーム購入などに当てないといけません。

(7) 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(注)。
(注) 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しない人であっても、次のイ又はロのいずれかに該当する場合は対象となります。
イ 贈与を受けた時に受贈者が日本国籍を有しており、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有していたこと。
ロ 贈与を受けた時に受贈者が日本国籍を有していないが、贈与者がその贈与の時に日本国内に住所を有していたこと。

日本に住んで、日本で働いている、普通の日本人であれば、意識する必要のない条件です。

(8) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
(注) 贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。

あなた自身が住むための住宅であることが、住宅取得資金贈与の非課税特例を受けるための基本条件であるということです。

住宅取得資金贈与の非課税特例について003
自動では適用されない!お手続きは余裕を持って行いましょう

ここまでご紹介してきた、住宅取得資金贈与の非課税特例ですが、きちんと手続きしないと適用されません。

自動ではないので御注意ください。

とは言え、それほど難しくないので時間に余裕を持って手続きするようにしましょう。

非課税の特例の適用を受けるための手続

非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

(注) 社会保障・税番号制度〈マイナンバー制度〉が導入されたことに伴い、個人番号を記載した各種申告書、申請書、届出書等を提出する際には、個人番号カード等の一定の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要になります。

引用:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm

要点をまとめてみます。

手続きの期限:
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間
※年末に贈与を受けた場合、3カ月程度しか猶予がないということになります。
必要書類:
非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書
戸籍の謄本
登記事項証明書
新築や取得の契約書の写し
マイナンバー関連の書類
ほか(ケースバイケースで必要書類が増える可能性があります。詳しくはお近くの税務署にお問合せください)
提出場所:
納税地の所轄税務署

以上です。

一番注意するのは提出期限です。

贈与を受けた年を基準に考えるのであって、新居へ入居した年でないことに気をつけましょう。

例えば、下記1~3の手順を踏んだケースで見てみます。

1)今年(平成29年・2017年)に親から贈与を受け、

2)来年(平成30年・2018年)一年かけて新築を建て、

3)再来年(平成31年・2019年)に入居した場合です。

この場合、住宅取得資金贈与の非課税特例の申告期限は、2)来年(平成30年・2018年)の2月1日から3月15日までの間となります。

支払期限を間違えるというような凡ミスを踏まないように気をつけた上で、申請がギリギリにならないよう、不明な点があれば税務署に質問しに行きましょう。

最後に

親からの資金援助は、子どもからしたらこの上ないほどありがたいものです。

親の立場からしても、子どもを金銭的に楽させてあげたいからこその援助だと思います。

その気持ちを汲む形で生まれた特例が住宅取得資金贈与の非課税特例だと思います。

せっかくある制度なので、知らずに余計な税金を支払わないように気をつけましょう。

この時、制度の仕組みを調べる責任は、贈与を受ける子供の方にあります。

親のありがたい気持ちをムダにしないという気持ちで、住宅取得資金贈与の非課税特例についてキチンと理解することが、最低限の礼儀ではないでしょうか。

 

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