
ニセ警察詐欺・オレオレ詐欺はなぜ引っかかる?「思考のクセ」から見る2026年最新手口と対策【トリセツショー関連】
7月30日放送のNHK総合「あしたが変わるトリセツショー」では、オレオレ詐欺に引っかかってしまう背景に、脳の「思考のクセ」があることが取り上げられました。この記事では、番組内容を踏まえつつ、2026年の特殊詐欺の最新データや、近年被害が急増している「ニセ警察詐欺」の具体的な手口、家庭で今日からできる対策を整理します。
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トリセツショーが見せた「思考のクセ」とだまされる仕組み
「あしたが変わるトリセツショー」では、オレオレ詐欺で「怪しい」と感じながらも信じてしまう心理を、脳科学・心理学の観点から解説していました。人は情報を一つずつ検証するのではなく、経験や第一印象に頼って素早く判断する仕組みを持っています。
この仕組みは日常生活を効率よく送るために欠かせないものですが、強い不安や急かされる状況では、正確な判断を妨げる方向に働くことがあります。詐欺の犯人グループは、まさにこの「思考のクセ」を計算ずくで利用してきます。
とくに悪用されやすいのが、警察官や公的機関の職員という「権威」への信頼です。次の章では、この権威を利用する手口が2026年にどれほど深刻化しているかを、警察庁の統計データで確認します。
2026年の特殊詐欺は過去最悪ペース|認知件数・被害額をデータで確認
警察庁が公表した令和8年(2026年)3月末時点の暫定値によると、特殊詐欺の認知件数は11,093件、被害額は937.9億円にのぼります。前年同期と比べて件数は2,576件、被害額は413.9億円増加しました。
この時点ですでに、令和5年(2023年)の年間被害額(907.7億円)を3か月間だけで上回っているという深刻な状況です。1日あたりの被害額も前年より1.5億円増え、10.4億円に達しています。
あわせて、2026年からはSNSを通じた投資詐欺・ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口として統計に含まれるようになりました。番組が扱う「身近な思い込み」は、電話だけでなくSNS上のやり取りにも共通するテーマといえます。
SNS型の投資詐欺では、著名な投資家や企業を装ったアカウントが「必ず儲かる」といった投稿で信頼を積み重ね、やり取りを重ねるうちに送金へと誘導します。電話一本で完結するオレオレ詐欺とは違い、数週間から数か月かけて関係を築いてから金銭を要求する点が特徴です。
統計の分類が変わったこと自体にも意味があります。警察庁がわざわざ手口を細分化するのは、それだけ被害の内容や手口が多様化していることの表れであり、「自分は電話の詐欺には気をつけているから大丈夫」という思い込みが、別の入口から崩されるリスクを示しているといえます。
2026年から独立した「ニセ警察詐欺」とは
警察庁は2026年、被害が急増している手口を新たに「ニセ警察詐欺」として独立した分類に位置づけました。警察官や検察官を名乗り、「あなたの口座が犯罪に使われている」などと不安をあおって現金や資産を詐取する手口です。
令和7年(2025年)の実績では、ニセ警察詐欺は認知件数11,014件で特殊詐欺全体の39.6%を占め、被害額は1,005.0億円と特殊詐欺全体の70.6%にまで達しました。既遂1件あたりの被害額も高額になりやすいのが特徴です。
警察庁は2026年6月、ニセ警察官が「身体的特徴の確認」「行動確認」などと称して、入浴中やトイレ利用時を含む常時ビデオ通話や、裸になることを要求する事案が確認されたとして注意喚起を行っています。令和8年4月末時点で247件(未遂・相談を含む)の報告があったとされ、肩書きへの信頼が判断力を奪う典型例といえます。
宅配便や荷物の受け取り方法を悪用したケースについては、宅配ボックスが特殊詐欺に悪用される仕組みと防犯対策でも詳しく解説しています。
オレオレ詐欺・アポ電の手口一覧
特殊詐欺と一口にいっても、犯人が使う口実にはいくつかのパターンがあります。ここでは代表的な3つの手口を、思考のクセとの関係とあわせて整理します。
家族を装う手口(オレオレ詐欺・示談金要求)
息子や孫を名乗り、「携帯電話をなくした」「会社のお金を使い込んだ」などと切迫した状況を演出します。さらに警察官や弁護士を名乗る人物が電話を代わり、示談金や損害賠償という名目で現金を要求するケースも目立ちます。
還付金・給付金を装う手口
自治体や年金事務所の職員を名乗り、「医療費の還付がある」「給付金の手続きが済んでいない」などと連絡し、被害者をATMへ誘導します。ATMの操作画面を見ながら電話越しに指示されるうちに、実際には犯人の口座へ振込む手続きをさせられてしまいます。
この手口では、ATMでお金を受け取れることは絶対にないという前提を知っておくことが重要です。「還付金」「払い戻し」という言葉とATMという組み合わせが出てきた時点で、詐欺を疑ってよい場面だと考えられます。
キャッシュカード手渡し型(預貯金詐欺)
銀行員や警察官を名乗り、「口座が犯罪に利用されている」「キャッシュカードの交換が必要」といった名目で自宅を訪問させ、封筒にカードを入れさせたうえで別のカードとすり替える手口です。訪問や電話の直後にカードを用意させようとすること自体が、危険なサインだと考えられます。
「思考のクセ」につけこまれないための5つの対策
思考のクセそのものをなくすことはできませんが、判断を「個人の注意力」に頼らず、仕組みとしてカバーすることは可能です。以下の5点は、トリセツショーで紹介された航空業界の安全対策の考え方とも重なります。
- 電話でお金・口座・逮捕の話が出たら一度切る:その場で判断せず、まず電話を終える。
- 相手が伝えた番号にはかけ直さない:以前から使っている家族の番号や、公式に公表されている警察の相談窓口を使う。
- 一人で判断・完結させない:家族や警察に一度相談してから行動する。
- 「今すぐ」「誰にも言わないで」は危険信号と決めておく:急かされる・口止めされる状況ほど、いったん立ち止まる。
- 普段からルールを共有しておく:家族で合言葉を決める、留守番電話設定にするなど、判断に迷わない仕組みを事前に作る。
これらは、番組内で紹介された「チェックリスト」「復唱」「第三者による確認」といった航空業界の手法にも通じる考え方です。重要な判断ほど、思い込みに気づく仕組みをあらかじめ用意しておくことが被害防止につながります。
実際、ニセ警察詐欺の被害相談では、電話を切って自分で警察署に確認の電話をかけ直したことで被害を防げた事例が多数報告されています。反対に、相手の指示のまま話を続けてしまうと、次から次へと不安をあおる情報が追加されてしまいます。
そうなると、冷静さを取り戻す機会そのものが失われてしまいます。「一度切る」という行動自体が、思考のクセを断ち切る最も簡単な手段だといえます。
家族の合言葉と相談窓口の作り方
家族で決める合言葉は、誕生日や好きな食べ物など、電話越しの短いやり取りでは推測しにくいものを選びます。合言葉を聞かれて答えられない、あるいは急に話をそらそうとする場合は、いったん電話を切って本人に確認するようにします。
不審な電話に気づいたときの相談先としては、警察相談専用電話「#9110」や、消費者ホットライン「188」が用意されています。ATMの前など、その場ですぐに相談できる窓口を家族で共有しておくと安心です。
また、固定電話に着信する国際電話番号を悪用した特殊詐欺も増えているため、普段海外と電話をやり取りしない家庭では、電話会社の国際電話利用休止サービスを申し込んでおくのも有効な対策です。
よくある質問
ニセ警察詐欺とオレオレ詐欺はどう違いますか?
オレオレ詐欺は家族を装う手口全般を指す呼び方です。ニセ警察詐欺は、その中でも警察官や検察官を名乗り「口座が犯罪に使われている」などと不安をあおる手口を指し、2026年から独立した分類として扱われるようになりました。
本物の警察官かどうか、その場で確認する方法はありますか?
相手が伝えてきた番号や、示された身分証・逮捕状のような画面を信用せず、電話を一度切ったうえで、自分で調べた警察署の代表番号に自らかけ直して確認するのが基本です。
高齢の家族に対策を伝えるコツはありますか?
「だまされる人は不注意」という前提ではなく、誰の脳にも共通する仕組みだと伝えるほうが受け入れられやすくなります。トリセツショーのような番組を一緒に見ながら話題にするのも、自然に対策を共有する方法のひとつです。
まとめ
トリセツショーで取り上げられた「思考のクセ」は、特殊詐欺の手口を理解するうえでも重要な視点です。2026年は認知件数・被害額ともに過去最悪ペースで増加しており、なかでも警察官を装う「ニセ警察詐欺」の被害額の大きさが際立っています。
「自分は大丈夫」と思った瞬間こそ、いったん電話を切り、家族や警察に相談する。このシンプルな行動をルール化しておくことが、思考のクセにつけこまれないための最も現実的な備えになります。

