海底光ファイバーで地震の兆候は見える?海の地震の“声”を聴け11月4日放送|11/4 11:00
2026年11月4日(水)11時からNHK BS8Kで放送される「海の地震の“声”を聴け -サイエンスZERO特別編-」は、海底で起きている変化を観測し、地震の被害を減らす手がかりを探る番組です。
今回の放送では、神戸大学による大阪湾の海底地形・活断層調査に加え、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が高知県室戸沖の海底光ファイバーケーブルで捉えようとしている「スロースリップ」にも迫ります。
特に注目したいのは、通信にも使われる光ファイバーを観測装置として活用する技術です。海底の広い範囲を連続的に調べることで、南海トラフ周辺のプレート境界で何が起きているのかを理解する研究につながっています。
海の地震の“声”を聴け11月4日の放送日時と出演者
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 放送日時 | 2026年11月4日(水)11:00〜11:30 |
| 放送局 | NHK BS8K |
| 番組名 | 海の地震の“声”を聴け -サイエンスZERO特別編- |
| 語り | 浅井理、上條倫子 |
| ゲスト | 松野哲男(神戸大学准教授)、巽好幸(神戸大学客員教授)、堀高峰(海洋研究開発機構) |
| 主なテーマ | 大阪湾の海底活断層調査、室戸沖の光ファイバー観測、スロースリップ |
番組表に掲載された放送情報では、神戸大学が大阪湾で進める海底地形調査と、JAMSTECが室戸沖の光ファイバーケーブルを使ってスロースリップに迫る研究が紹介されています。
番組の中心となるのは、海底の下で起きている変化をどのように捉えるかという点です。地上からは見えにくい海底の断層やプレート境界を調べることは、地震の発生メカニズムを理解し、被害を減らすための基礎になります。
海底光ファイバーで何を観測する?DASの仕組み
海底光ファイバーを使う観測では、光ファイバーそのものをセンサーとして利用します。JAMSTECが紹介する分散型音響センシング(DAS)は、光ファイバーに生じるわずかなひずみを測り、ケーブルが敷かれた範囲の変化を捉える技術です。
従来の海底地震計は、設置した場所の揺れを捉える「点」の観測が基本です。一方、DASではケーブルに沿った複数の区間を測定できるため、線状に連続した観測データを得られます。
JAMSTECの2024年の発表では、光ファイバーを数メートルから数十メートル間隔のチャネルに分けてひずみを測定し、計測距離は100kmに達すると説明されています。
室戸沖のケーブルは南海トラフの研究にどう使われる?
JAMSTECは四国の室戸沖に設置された海底光ケーブルを使い、南海トラフ周辺で起きるスロー地震などを捉えるためのDAS観測を続けています。海底の光ファイバーを通じてデータを陸上へ送り、ケーブルに沿った変化を解析する仕組みです。
この観測が重要なのは、南海トラフの震源域が海の下に広がっているためです。陸上の観測網だけでは直接把握しにくい海底の変化を、既に敷設されているケーブルも活用しながら調べられる可能性があります。
ただし、光ファイバーなら何でもすぐに地震計として使えるわけではありません。通信に使われているケーブルを観測に利用するには、通信を妨げない測定方法や、海底環境によるノイズを区別する技術が必要です。
観測できる場所や精度にも条件があり、研究は技術の改良と検証を重ねている段階です。
光ファイバーは津波の伝わり方も捉えた
DASの実用性を示す例として、JAMSTECは2024年6月、2023年10月9日に鳥島近海で発生した津波を室戸沖の海底光ケーブルで捉えた研究成果を発表しました。
このとき、津波が室戸沖の沖合約60kmから沿岸付近まで伝わる様子を観測できました。光ファイバーに生じたひずみの要因を評価し、将来的にデータから津波の波高を推定できる可能性も示されています。
この成果は、光ファイバーが地震の揺れだけでなく、海底を伝わる津波の観測にも活用できる可能性を示すものです。今回の番組で紹介されるスロースリップの研究と同じく、海底の変化を広い範囲で捉える観測技術の発展につながっています。
スロースリップとは?普通の地震と何が違う?
スロースリップは、プレート境界などの断層が、通常の地震よりもゆっくりと滑る現象です。JAMSTECの研究者による解説では、海底下で起きるタイプの一例として、数日から長くて3週間ほどかけて、断層が数センチから10センチ程度滑るケースが紹介されています。
通常の地震では、断層が短い時間に大きく動き、P波やS波などの地震波が観測されます。一方、スロースリップは時間をかけて進むため、一般的な地震のような強い揺れとして感じられるとは限りません。
微弱な地震波が検出されるものをスロー地震、地震波がほとんど見えないものをスロースリップと呼び分けることがあります。
スロースリップが南海トラフで注目される理由
南海トラフでは、海側のプレートが陸側のプレートの下へ沈み込んでいます。プレート同士が固着している場所にはひずみが蓄積し、その一部がゆっくり滑る現象として現れることがあります。
スロースリップを詳しく観測することで、プレート境界のどこがどのような状態にあるのかを知る手がかりが増えます。発生する場所や頻度、周辺の地殻変動との関係を継続的に調べることが、巨大地震の発生メカニズムを理解するうえで重要です。
JAMSTECの解説では、スロースリップが通常の巨大地震を直接引き起こすかどうかは、まだ分かっていないと説明されています。ただし、巨大地震が発生しやすいプレート境界の状態が、スロースリップの発生場所や頻度に反映されている可能性があるとされています。
スロースリップを観測すれば地震の発生時期が分かる?
現時点で、スロースリップを観測しただけで巨大地震の発生日時や規模を特定できるわけではありません。観測データを積み重ね、プレート境界の状態や変化を理解することが研究の目的です。
地震の発生を正確に言い当てることと、地震が起きる場所の状態を詳しく知ることは別です。光ファイバー観測の価値は、これまで観測が難しかった海底の変化を継続して捉え、地震や津波の研究に使えるデータを増やせる点にあります。
そのため、番組のテーマである「地震の被害低減」は、すぐに地震を予知できるという意味ではありません。海底観測の精度や範囲を高め、地震発生の仕組みや津波の伝わり方を詳しく知ることが、防災の基礎につながります。
大阪湾の海底調査では何を見つける?
番組では、神戸大学が大阪湾の海底地形を詳しく調べ、最近活動した活断層を見つけようとする研究も紹介されます。海底は陸上と違い、断層の位置や地層の重なりを直接目で確かめることができません。
そのため、船に搭載した音響機器で海底の形や海底下の地層構造を調べます。
神戸大学の海神丸研究航海報告では、松野哲男准教授が代表する調査として、播磨灘と大阪湾の海底活断層の分布・活動履歴、堆積層や浅い地質構造を調べる計画が記録されています。海神丸に搭載されたマルチナロービーム測深器とサブボトムプロファイラーを使い、海底地形と海底下数十メートルまでの地層を高精度で調べる内容です。
マルチナロービーム測深器は、音波を使って海底の深さや形状を測る機器です。サブボトムプロファイラーは、海底の下にある地層の構造を調べるために使われます。
2種類のデータを組み合わせることで、海底の起伏だけでなく、地層のずれや断層の活動履歴を検討する材料が得られます。
大阪湾のように船の往来や漁業活動が盛んな海域では、調査できる航路や測線にも制約があります。神戸大学の報告書にも、海域の状況に合わせて調査範囲を調整しながらデータを取得したことが記されています。
こうした地道な観測を重ねることで、海底の断層がどこにあり、過去にどのように動いたのかを明らかにしていきます。
出演する研究者はどんな人?
番組表に掲載された出演者は、語りの浅井理さんと上條倫子さん、ゲストの松野哲男さん、巽好幸さん、堀高峰さんです。研究者それぞれの専門分野が異なり、海底の地形、地球内部、プレート境界の観測という複数の視点から海の地震を考える構成です。
松野哲男さんは神戸大学の海洋底探査センターに所属する准教授です。研究者紹介では固体地球科学を研究分野とし、海底の地形や地層構造の調査に関わっています。
今回の大阪湾の活断層調査では、海神丸を使った海底地形・地層構造の研究が番組のテーマと結びつきます。
巽好幸さんは神戸大学の海洋底探査センター客員教授として番組表に記載されています。地球内部の活動や火山・マグマの研究でも知られる研究者で、地球の内部で起きている現象を広い視点から考える立場です。
堀高峰さんはJAMSTECの研究者です。JAMSTECの研究者総覧では、2026年4月から地震火山研究部門の専門部長(南海トラフ地震防災プロジェクト担当)・上席研究員として掲載されています。
南海トラフ地震の防災に関わる研究を担い、海底観測やプレート境界の状態把握に関わる専門家です。
語りを担当する浅井理さん、上條倫子さんは、研究内容や観測技術を視聴者に伝える役割です。専門用語が多くなりやすい地震研究を、番組の進行に沿って理解する手がかりになります。
前回(10月26日放送)との違い
同じ番組は10月26日(月)17時から17時30分にもNHK BS8Kの番組表に掲載されていました。10月26日放送分の記事では、大阪湾の海底地形調査を中心に、活断層と海底観測で分かることを整理しています。
10月26日放送分の大阪湾の活断層と海底観測をまとめた記事も参考にしてください。
今回の記事では、もう一つの大きな柱である室戸沖の光ファイバー観測に焦点を当てました。DASがどのように海底のひずみを捉えるのか、スロースリップとはどのような現象なのか、観測データが地震予測とどう関係するのかを知っておくと、番組の内容をより立体的に理解できます。
参考にした情報
- 番組表.Gガイド「海の地震の“声”を聴け -サイエンスZERO特別編-」
- JAMSTEC BASE「『ゆっくり地震』を捉えろ!光のものさしで海底の変化を観測する」
- JAMSTEC「海底光ファイバーケーブルによる津波伝播の観測」
- 神戸大学「令和5年度 海神丸夏季研究航海 研究活動報告」
- JAMSTEC研究者総覧「堀高峰」
- 神戸大学研究者紹介「松野哲男」
よくある質問
海の地震の“声”を聴けはいつ放送されますか?
2026年11月4日(水)11時から11時30分まで、NHK BS8Kで放送される予定です。
スロースリップとは何ですか?
断層が通常の地震よりもゆっくり滑る現象です。数日から数週間かけて進む場合があり、南海トラフ周辺のプレート境界の状態を知る手がかりとして研究されています。
海底光ファイバーで地震を予知できますか?
光ファイバー観測だけで地震の発生日時や規模を特定できるわけではありません。海底のひずみや揺れを広い範囲で捉え、地震や津波の発生メカニズムを理解するための観測技術です。
まとめ
11月4日放送の「海の地震の“声”を聴け -サイエンスZERO特別編-」では、大阪湾の海底活断層調査と、室戸沖の海底光ファイバーを使ったスロースリップ観測が紹介されます。
今回注目したいのは、DASによって海底の変化をケーブルに沿って捉えようとする研究です。スロースリップは巨大地震との関係が研究されているものの、発生を直接予測できる段階ではありません。
観測データを積み重ね、海底で起きている現象を理解することが、将来の地震・津波防災につながります。

