健康・医療

「好き・嫌い」は脳のどこで決まる?東大研究が解明した仕組みを解説

「好きな人」「苦手な人」という感情は、脳のどこでどのように決まるのでしょうか。東京大学などの研究チームが、他者の記憶と好悪を結びつける神経回路をマウス実験で明らかにしました。

研究は人間の感情を自由に操作するものではありません。何が分かったのか、社会性記憶とは何か、日常の好き嫌いとどう関係するのかを分かりやすく整理します。

この記事の要点

  • 相手の記憶と好き嫌いの感情は別の神経情報として扱われます
  • 経験に応じて相手への評価を更新する回路が示されました
  • 研究はマウスを対象とした基礎研究です
  • 人間関係や精神疾患研究への応用が期待されます

「好き・嫌い」の研究で何が分かった?

東京大学と科学技術振興機構の研究チームは、マウスを使い、他者の記憶と好悪の感情を柔軟に結びつける神経回路を調べました。社会的な相手の記憶は海馬、快・不快の価値情報は扁桃体などが関わります。

研究では、相手の記憶を表す神経細胞群と感情価を表す回路が連携し、経験に応じて評価を更新する仕組みが示されました。一度決まった好悪が脳内で固定されているわけではないことを示す成果です。

人間の好き嫌いを直接読める研究ではない

実験はマウスを対象とした基礎研究です。人間の恋愛感情や人間関係をそのまま説明したり、特定の相手を好きに変えたりできる技術ではありません。

研究成果を日常の性格診断や心理操作へ短絡的に結びつけないことが重要です。

社会性記憶とは?

社会性記憶とは、以前会った相手を覚え、その相手との経験を基に行動を変える能力です。人間だけでなく、群れで暮らす動物にも重要です。

マウスは見知らぬ個体へ近づく傾向があり、親しい個体と未知の個体への反応差から記憶を調べられます。誰を覚えているかという情報は、海馬の腹側CA1領域が関わるとされています。

記憶と感情は別々の情報

相手を覚えていることと、その相手を好きか嫌いかは同じ情報ではありません。過去の記憶があっても、新しい経験で評価が変わることがあります。

脳は相手の識別情報と、快・不快の価値を組み合わせて行動を選んでいると考えられます。

脳は好き嫌いをどう更新する?

最初は苦手だった人でも、助けてもらった経験を重ねると印象が変わることがあります。反対に、信頼していた相手との嫌な経験で距離を置くこともあります。

今回の研究は、このような更新に関わる回路を動物実験で示しました。記憶を保ったまま感情的な価値を付け替える仕組みが、柔軟な社会行動につながります。

感情は一つの場所で決まらない

「好き中枢」「嫌い中枢」という単一の場所だけで感情が決まるわけではありません。記憶、報酬、不安、感覚、身体反応など複数のネットワークが関係します。

脳研究の見出しを読む際は、一つの部位ですべてを説明したと誤解しないようにしましょう。

実験ではどのように調べた?

研究チームは、マウスの行動を観察し、特定の個体への接近や回避を測定しました。神経活動を記録し、光遺伝学などを用いて特定の細胞や回路の働きを操作します。

回路を操作したときに相手への評価がどう変わるかを比較することで、因果関係を検証します。単なる脳画像の相関だけではなく機能を確かめる方法です。

光遺伝学とは

光遺伝学は、光に反応するタンパク質を神経細胞へ導入し、特定の細胞の活動を光で制御する研究手法です。

非常に精密な実験ができますが、人間の日常的な治療として同じ操作を行う技術ではありません。

人間関係の改善に応用できる?

基礎研究の段階では、友人関係や恋愛を直接変える方法にはなりません。ただし、社会的な記憶と感情の結びつきが分かれば、対人不安や精神疾患の理解に役立つ可能性があります。

トラウマや不安では、特定の人や状況へ過度な恐怖が結びつくことがあります。安全な記憶へ更新する仕組みの理解は、将来の治療研究につながる可能性があります。

日常では経験の積み重ねが重要

脳回路を操作しなくても、安心できる経験や対話を積み重ねることで相手への評価が変わることがあります。

一度の印象を絶対視せず、新しい情報を受け入れることが、人間関係の柔軟性につながります。

好き嫌いは理性で変えられる?

感情は意識だけで完全に制御できるものではありません。しかし、相手に関する新しい経験、状況の理解、身体状態の変化で評価は変わります。

疲労やストレスが強いと、相手の行動を否定的に受け取りやすくなる場合があります。自分の状態と相手の評価を分けて考えることも有効です。

嫌いな感情を無理に消す必要はない

危険な相手を避ける感情には、自分を守る役割があります。すべての苦手意識を克服する必要はありません。

感情の理由を理解し、適切な距離を取ることも健全な選択です。

研究成果の今後の可能性

社会性記憶と感情価を結ぶ回路の理解は、自閉スペクトラム症、うつ病、不安症などの研究へ新しい視点を与える可能性があります。

ただし、疾患は一つの脳回路だけで生じるものではなく、遺伝、環境、発達、生活状況が関係します。すぐ治療法になると期待しすぎないことが必要です。

まとめ

東京大学などの研究は、マウスが他者の記憶と好き嫌いの感情を経験に応じて更新する神経回路を明らかにしました。社会性記憶と感情価が別の情報として結びつくことがポイントです。

人間の感情を自由に操作できる研究ではありませんが、対人行動や精神疾患の基礎理解へつながる成果です。

参考情報

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