土曜ドラマ「おもかげ」脚本は吉田康弘|過去作と作風を解説
NHK土曜ドラマ「おもかげ」で脚本を担当しているのは、映画監督・脚本家の吉田康弘さんです。浅田次郎さんの小説を原作に、中村雅俊さん演じる竹脇正一が意識不明のなかで自らの過去と向き合っていく物語を、テレビドラマとして構成しています。
吉田康弘さんは映画「キトキト!」で監督デビューし、その後も「旅立ちの島唄~十五の春~」「バースデーカード」「かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-」などで監督・脚本を担当してきました。この記事では経歴と代表作を確認しながら、「おもかげ」にもつながる家族、記憶、別れ、再生を人物の感情から描く作風を整理します。
「おもかげ」の脚本は吉田康弘|原作・演出との役割を整理
「おもかげ」は浅田次郎さんの同名小説を原作とするドラマで、脚本を吉田康弘さん、演出を小林聖太郎さんが担当しています。2023年にBS4Kで119分版が放送され、2026年10月には全3話の土曜ドラマとして総合テレビで放送されています。
物語の中心は、65歳で定年を迎えた商社マン・竹脇正一です。送別会の帰りに倒れて意識不明となった正一は、自分の身体を離れたような不思議な体験をし、謎めいた女性たちに導かれて、忘れようとしていた幼少期や人生の記憶をたどります。脚本には、原作の出来事を並べるだけではなく、映像として誰の視点を前に出し、どの記憶をどの順番で見せるかという構成力が求められる題材です。
ドラマ全体の基本情報を先に確認したい方は、土曜ドラマ「おもかげ」まとめ|あらすじ・キャスト・放送日・原作もあわせてご覧ください。原作との関係は「おもかげ」原作は浅田次郎の小説|原作とドラマの違いで詳しく整理しています。
吉田康弘の経歴|映画監督と脚本家の両方で活動
吉田康弘さんは1979年7月5日生まれ、大阪府出身。映画「旅立ちの島唄~十五の春~」公式サイトの監督紹介によると、なんばクリエイターファクトリー映像コースで井筒和幸監督に学び、「ゲロッパ!」の現場に見習いとして参加したことをきっかけに映画の世界へ入りました。
その後、「パッチギ!」「村の写真集」「雨の街」「嫌われ松子の一生」などの制作現場に参加し、2007年の映画「キトキト!」で監督デビュー。同作では大竹しのぶさん演じる型破りな母親と息子の関係を描き、監督として家族を主題にした物語を世に送り出しました。
脚本家としては井筒和幸監督の「ヒーローショー」「黄金を抱いて翔べ」などを担当。監督作でも自ら脚本を手がける作品が多く、映画とテレビドラマの双方で、人物の内面と関係性を組み立てる仕事を続けています。
| 項目 | 内容 |
| 名前 | 吉田康弘(よしだ・やすひろ) |
| 生年月日 | 1979年7月5日 |
| 出身 | 大阪府 |
| 主な活動 | 映画監督・脚本家 |
| 監督デビュー | 映画「キトキト!」(2007年) |
| 「おもかげ」 | 脚本 |
吉田康弘の主な過去作|脚本・監督でどんな作品を手がけた?
吉田康弘さんのフィルモグラフィーを見ると、オリジナル映画から小説原作のドラマ、社会派作品、刑事ドラマまで幅広いジャンルを担当しています。ここでは「おもかげ」の作風を考える手がかりになる代表作を中心に整理します。
「キトキト!」|家族を描いた監督デビュー作
2007年公開の「キトキト!」は、吉田康弘さんの長編映画監督デビュー作です。母と息子を軸にした家族の物語で、後の作品にもつながる「近すぎる家族だからこそ言えない感情」「離れてから見えてくるつながり」というテーマを早い段階から扱っています。
「旅立ちの島唄~十五の春~」|父娘の距離と別れ
「旅立ちの島唄~十五の春~」では監督・脚本を担当。南大東島を舞台に、高校進学のため島を離れる少女と家族を描きます。公式サイトのインタビューで吉田監督は、物語を「父娘」の話として構成したことや、映画のテーマの一つとして人と人との“距離”を意識したことを語っています。
大きな事件よりも、家族が互いを思いながらも距離を抱える時間を積み重ね、別れの瞬間に感情を凝縮する作りが特徴です。この視点は、過去の人々との距離をたどる「おもかげ」とも重なります。
「バースデーカード」|喪失を悲劇だけで終わらせない
2016年の「バースデーカード」では監督・脚本を担当。亡くなった母から毎年届く手紙を通して、娘が成長していく物語です。吉田監督はインタビューで、母の死そのものを強く見せるより、母の存在を感じながら娘が生きていくこと、そして手紙を受け取った娘がどう成長するかを重視したと説明しています。
「喪失」を終点にせず、残された人が過去を受け止めて次へ進む物語にする姿勢は、人生の終盤で過去と向き合う「おもかげ」を考えるうえでも重要です。
テレビドラマでも幅広く脚本を担当
映画だけでなく、「コウノドリ」第2シリーズ、「コールドケース~真実の扉~」シリーズ、「インハンド」「キワドい2人-K2-池袋署刑事課神崎・黒木」などテレビドラマの脚本も担当しています。さらに「プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~」では監督・脚本を務めるなど、ジャンルに応じて人間ドラマを組み立ててきました。
- キトキト!:監督・脚本
- 旅立ちの島唄~十五の春~:監督・脚本
- 江ノ島プリズム:監督・脚本
- バースデーカード:監督・脚本
- プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~:監督・脚本
- かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-:監督・脚本
- コールドケース~真実の扉~:脚本
- コウノドリ 第2シリーズ:脚本
- インハンド:脚本
- おもかげ:脚本
吉田康弘の作風|家族・記憶・「言えなかった感情」を丁寧に描く
吉田康弘さん自身がすべての作品に共通する「作風」を一言で定義しているわけではありません。そのため、ここでは監督・脚本作品と本人インタビューから確認できる作品上の傾向として整理します。
1.家族を“仲の良さ”だけで描かない
「キトキト!」「旅立ちの島唄」「バースデーカード」「かぞくいろ」などでは、家族が物語の重要な軸になります。ただし、単純な家族愛ではなく、親子の距離、死別、再婚、進路、離れて暮らす時間など、家族だからこそ生まれる複雑さから関係を描く作品が目立ちます。
「おもかげ」でも、正一は妻や友人に囲まれながら、幼少期から抱えてきた孤独を心の奥にしまい込んでいます。現在の家族関係と過去の記憶が交差する構造は、吉田作品で繰り返し扱われてきた「近い関係の中にある距離」と相性のよい題材です。
2.出来事より、出来事を受けた人物の変化を追う
「バースデーカード」のインタビューでは、母から手紙が届いて感動すること自体より、そこから娘がどう成長するかを大事にしたと語っています。これは、事件や設定をゴールにするのではなく、経験によって人物の見え方や生き方がどう変わるかを追う姿勢といえます。
「おもかげ」でも重要なのは、正一が不思議な体験をすること自体ではありません。その体験を通して、忘れようとした記憶や、自分が知らなかった他者の思いに触れ、人生をどう受け止め直すかが物語の核になります。
3.過剰に説明せず、人物同士の距離で感情を見せる
「旅立ちの島唄」の公式インタビューでは、父娘の別れを軸にしながら「距離」を意識していたことが明かされています。離れているからこそ見える感情、口に出せない思い、行動や視線に表れる関係を積み上げるタイプの演出・脚本は、静かな余韻を生みます。
そのため「おもかげ」も、謎の女性の正体や記憶の仕掛けだけを追うより、正一が誰とどのような距離を取って生きてきたのかを見ると、脚本の意図をつかみやすくなります。
「おもかげ」で吉田康弘脚本に注目したいポイント
「おもかげ」は一見すると、意識不明の主人公が身体を抜け出し、謎の女性たちと過去をめぐる幻想的なドラマです。しかし脚本を見るポイントは、仕掛けの説明以上に、正一が封じてきた記憶がどの順番でほどかれていくかにあります。
現在の病室では、妻・節子、友人、仕事仲間、家族たちが意識の戻らない正一に言葉をかけます。一方の正一は別の場所で過去をたどります。本人が聞けないはずの現在の言葉と、本人しか向き合えない過去が並行することで、「自分が思っていた人生」と「周囲の人が見ていた人生」の差が浮かびます。
また、原作が浅田次郎さんの小説である以上、脚本は原作の文章表現をそのまま映像へ移すのではなく、場面、台詞、回想、人物の登場順に置き換える必要があります。ドラマ版の構成を見る際は、「何が原作から残され、何が映像用に整理されたか」に注目すると、吉田康弘さんの脚色の仕事が見えやすくなります。
制作統括や演出を含めたチーム構成は土曜ドラマ「おもかげ」制作スタッフ|制作統括・演出まとめ、富貴晴美さんによる劇伴は土曜ドラマ「おもかげ」音楽は富貴晴美|劇伴の魅力と代表作で確認できます。
「おもかげ」脚本・吉田康弘についてのFAQ
Q1.土曜ドラマ「おもかげ」の脚本家は誰ですか?
吉田康弘さんです。原作は浅田次郎さんの小説「おもかげ」、演出は小林聖太郎さんが担当しています。
Q2.吉田康弘さんは映画監督でもありますか?
はい。2007年の「キトキト!」で長編映画監督デビューし、「旅立ちの島唄~十五の春~」「バースデーカード」「かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-」などで監督・脚本を務めています。
Q3.吉田康弘さんの作風の特徴は?
作品群と本人のインタビューからは、家族や親子の距離、喪失、記憶、人物の成長や再生を丁寧に描く傾向が読み取れます。大きな出来事そのものより、その経験を受けて人物がどう変わるかを重視する作品が目立ちます。
Q4.「おもかげ」を見るとき脚本面で注目する点は?
正一の過去がどの順番で明かされるか、病室の現在と幻想的な過去の旅がどう並行するか、そして謎の女性たちとの出会いが正一の記憶をどう変えるかに注目すると、ドラマ構成を味わいやすくなります。
まとめ|吉田康弘の脚本歴を知ると「おもかげ」の人間ドラマが見えやすい
土曜ドラマ「おもかげ」の脚本を担当する吉田康弘さんは、映画監督と脚本家の両方で長く活動し、2007年の「キトキト!」以降、家族や人間関係を軸にした作品を数多く手がけてきました。
代表作をたどると、家族の距離、別れ、喪失、記憶、そして経験を経た人物の変化を丁寧に描く傾向が見えてきます。「おもかげ」も、正一の不思議な体験そのものより、彼が忘れようとしていた過去をどう受け止め直すのかが重要なドラマです。吉田康弘さんの過去作を知ってから見ると、台詞だけでなく、人物同士の距離や記憶のつながりにも目が向き、作品の人間ドラマをより深く味わえます。

