驚き!地球!グレートネイチャー「地中海ミステリーリング」2万年前の氷期から円形模様が残るまで|11/5 12:00
2026年11月5日(木)12時からNHK BSP4Kで放送される「驚き!地球!グレートネイチャー 選 大調査!地中海ミステリーリング」。
フランス・コルシカ島沖の海底では、1000個を超える円形模様が見つかっています。人が描いたように整った輪ですが、その正体は人工物ではなく、約2万年前の氷期から続く海底の環境変化と、藻類の成長・崩壊に関係するものと考えられています。
今回の見どころは、奇妙な円を発見した瞬間だけではありません。音波探査、潜水調査、年代測定、海面上昇の痕跡をつなぎ合わせ、海底に残された地球の歴史を読み解いていく過程です。
11月5日放送の日時・番組情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 放送日時 | 2026年11月5日(木)12:00〜12:30 |
| 放送局 | NHK BSP4K |
| 番組名 | 驚き!地球!グレートネイチャー 選 |
| 今回のテーマ | 大調査!地中海ミステリーリング |
| 語り | 荒木さくら(番組表掲載情報) |
番組紹介によると、地中海のフランス・コルシカ島沖、水深およそ100メートルの海底で1000個以上の円形模様が見つかりました。3年にわたる大規模調査によって、そこに約2万年の地球の歴史が刻まれていることが分かっていきます。
ミステリーリングはどこで見つかった?
リングが見つかったのは、フランス領コルシカ島の北東側、カップ・コルス沖の海底です。陸から離れた海域の砂地に、直径約20メートルの円形構造が複数まとまって存在しています。
ARTEのドキュメンタリー紹介では、2011年の音波探査で1417個の円形模様が確認され、約15平方キロメートルに広がっていたと説明されています。NHKオンデマンドの作品紹介は「1000個以上」、National Geographicは「1300個以上」と紹介しており、資料によって丸め方や集計表現に違いがあります。
水深についても、番組紹介では約100メートル、フランス側の調査資料では約120メートルとされています。いずれも通常のレジャーダイビングで簡単に観察できる深さではなく、長時間の潜水や専用装置が必要になる海域です。
発見から解明までの調査を時系列で整理
2011年:音波探査の画面に規則正しい円が現れる
最初の発見は、2011年に行われた海底地形の調査でした。IFREMERとコルシカ大学の調査でソナー画像を確認していた研究者たちが、砂地の中に繰り返し現れる円形の模様を見つけます。
最初に見えたのは、中央に暗い点があり、その外側を輪が囲むような形でした。海底に沈んだ人工物なのか、地質現象なのか、生物が作った構造なのか、画像だけでは判断できませんでした。
2013〜2014年:追加調査でも正体は決まらない
発見後、研究者たちは調査結果を学会で報告し、潜水艇を使った追加調査も行いました。しかし、円形模様がなぜ同じような形を繰り返すのか、どのようにできたのかは解明されませんでした。
この段階では、海底火山などの地質現象や、戦争中の爆弾による痕跡といった可能性も考えられていました。海底の映像だけで結論を出さず、構造の中身や年代を確かめる必要があったのです。
2020年:ローラン・バレスタが初めてリングへ潜る
水中探検家で写真家のローラン・バレスタは、2020年にリングへの初潜水を行いました。海底に滞在できる時間は短く、通常の潜水では観察と撮影に使える時間が限られます。
実際に近づいて見ると、リングの中央には石のように見える盛り上がりがあり、その周囲には白っぽい破片状の堆積物、さらに外側には暗い輪がありました。中央部と外周部が同じ材料でできているわけではないことが、構造を考える手掛かりになります。
2021年:加圧設備を使った長時間の潜水調査
2021年には、潜水士が水中で長く活動するための飽和潜水調査が行われました。海面に加圧された居住設備を設け、水中の圧力環境に体を慣らした状態で潜水ベルを使って海底へ移動する方法です。
Gombessaの調査記録によると、2021年のミッションでは21日間の飽和潜水が実施されました。ARTEの紹介でも、4人のダイバーが加圧された小さな居住空間で21日間過ごしながら、深い海底を調べたことが説明されています。
2022年:周辺の海底環境と生態系を調べる
2022年には、11か所の海底と周辺環境を対象に15回の自律潜水調査が実施されました。調査対象はリングそのものだけではなく、周辺にある生物の生息場所や海底の地形にも広がっています。
リングの形だけを観察していても、なぜその場所に生まれたのかは分かりません。周囲の地形や生き物の分布を合わせて調べることで、過去の海岸線や水深の変化を読み解く材料が増えていきました。
2023年:2隻の潜水艇や無人探査機で広い範囲を調査
2023年の調査では、2隻の探査用潜水艇に加え、無人探査機ROVや自律航行する海上ドローンも使われました。海底の地質、洞窟、海藻の森、リング周辺の生態系などを複数の方法で調べています。
コルシカ岬・アグリエート海洋自然公園の記録では、2021年から2023年にかけて調査が段階的に進められ、2023年にはリングが広がる約20平方キロメートルの範囲を潜水艇で調査したとされています。
約2万1000年前の年代測定が最大の手掛かりに
リングの正体を考えるうえで重要だったのが、中央にある盛り上がりの内部から採取した試料です。研究チームは岩のような部分を採取し、放射性炭素年代測定によって古さを調べました。
National Geographicが紹介した調査では、中央部の最も古い試料は約2万1000年前のものと判明しました。この年代は、最終氷期最盛期にあたります。
当時は現在より気温が低く、大陸の氷床が大きく発達していました。海面は現在より低く、現在のリングがある場所も、太陽光が届く浅い海底だったと考えられています。
この年代測定によって、リングは最近できた穴や人工物ではなく、氷期の海底環境に由来する可能性が高まりました。中央部に残る古い藻類の構造が、長い時間をたどるための手掛かりになったのです。
藻類と海面上昇から考える円形の形成過程
中央の盛り上がりはサンゴではなく石灰藻
リングの中心にある岩のような部分は、一般的なサンゴそのものではなく、石灰藻が作った石灰質の構造と説明されています。石灰藻は光合成を行う藻類で、炭酸カルシウムを含む骨格を作ります。
氷期の浅い海では、太陽光が届く海底に石灰藻の群落が広がり、長い時間をかけてドーム状に成長したと考えられています。National Geographicの記事では、こうした群落が約3000年にわたり成長した可能性が紹介されています。
氷床が溶けて海面が上がり、藻類のドームが崩れる
その後、地球が温暖化して大陸の氷床が溶けると、海へ流れ込む水が増え、地中海の海面も上昇しました。光を必要とする石灰藻は、海底が深くなって日光が届きにくくなると成長を続けられなくなります。
藻類のドームは崩れ、中央の盛り上がりと、その周囲に散らばった石灰質の破片が残りました。約2万年前から続く海面上昇が、現在のリングの土台を作ったという見方です。
約8000年前から外側の輪が形づくられた可能性
海面が安定した約8000年前になると、中央の構造には深い海に適応した藻類が新たに層を重ねていったと考えられています。
一方、崩れた石灰質の破片には、サンゴモ類などの石灰藻が付着して粒状の塊になりました。こうした塊が斜面を転がり、中央の盛り上がりの周囲に集まることで、外側の輪のような形ができたという仮説です。
つまり、円形模様は誰かが線を描いたものではなく、藻類が作った構造、氷期後の海面上昇、破片の移動が長い時間をかけて重なった結果と考えられています。ただし、重力によって粒が円形に集まったという説明は、研究チームが提示する有力な仮説であり、すべての形成過程が完全に実証されたわけではありません。
リングの周囲にはどんな生き物がいる?
調査で分かったのは、円形模様の成り立ちだけではありません。リングの周囲には、普段の潜水ではなかなか観察できない生き物が暮らしています。
National Geographicの調査記事では、黄色いサンゴ、ピンク色のヤギ類、シャコ類、小型の魚、ウミウシなどが紹介されています。リングは地形として珍しいだけでなく、さまざまな生き物が集まる生態系でもあります。
また、船舶の錨が海底に落ちると、リングや周辺の生物を壊してしまうおそれがあります。リングの一部は海洋自然公園の保護区域内にありますが、すべてが保護区域に含まれているわけではありません。
調査チームは、海底の地形と生物の情報を集めることで、船の錨泊などからこの環境を守るための資料を整えています。ミステリーリングの正体を知ることは、珍しい景観を紹介するだけでなく、海底の生態系を保全することにもつながっています。
以前の地中海ミステリーリング記事との違い
地中海ミステリーリングの正体と水深100メートルに1000個以上の円ができた理由を紹介した記事では、リングの場所や形、正体の概要を中心にまとめています。
今回の記事では、同じテーマを繰り返すのではなく、2011年の発見から2023年の調査までを年表として整理し、年代測定で分かった約2万1000年前の環境、氷期後の海面上昇、石灰藻の成長と崩壊をつなげて解説しました。
参考にした情報
- NHKオンデマンド「体感!グレートネイチャー 地中海!ミステリーリングの謎を追う」
- J:COMテレビ番組表「驚き!地球!グレートネイチャー 選 大調査!地中海ミステリーリング」
- ARTE「Cap Corse, le mystère des anneaux」
- コルシカ岬・アグリエート海洋自然公園「CAP CORSE : LE MYSTERE DES ANNEAUX」
- Gombessa Expeditions「Le mystère des anneaux du Cap Corse」
- National Geographic「What drew these 1,300 perfect circles on the sea floor?」
- フランス海洋省「Cap Corse : Le Mystère des Anneaux」
よくある質問
地中海ミステリーリングはどこにありますか?
フランス領コルシカ島の北東側、カップ・コルス沖の海底です。水深はおよそ100〜120メートル、直径約20メートルの円形構造が1000個以上確認されています。
ミステリーリングは人工物や爆弾の跡ですか?
人工物や爆弾の跡ではなく、石灰藻が作った構造と、その破片が長い時間をかけて集まったものとする仮説が有力です。
リングができたのは何年前ですか?
中央部の最も古い試料は約2万1000年前と測定されました。外側の輪の形成には、海面が安定した約8000年前以降の藻類の活動も関わったと考えられています。
11月5日の放送は何時からですか?
2026年11月5日(木)12時から12時30分まで、NHK BSP4Kで放送予定です。
まとめ
コルシカ島沖のミステリーリングは、約2万1000年前の氷期に育った石灰藻の構造を起点に、海面上昇による崩壊や、その後の藻類の活動が重なって現在の姿になったと考えられています。
2011年のソナー発見から、潜水調査、試料の年代測定、複数の探査機による周辺環境の調査まで、研究者たちは長い時間をかけて証拠を積み重ねてきました。海底に並ぶ円は、地球の気候と生き物が作り出した約2万年の記録なのです。

