花王の精密界面制御技術とは?洗剤から農業・半導体へ広がる強み【カンブリア宮殿10/1】|10/1 23:06
2026年10月1日の「カンブリア宮殿」で、花王の業績回復とヒット連発の原動力として紹介されるのが「精密界面制御技術」です。洗剤やメイク落としの会社というイメージが強い花王ですが、同じ研究基盤を農業や半導体などへ広げています。
「界面」という言葉は専門的に見えますが、日常生活では水と油、肌と洗浄料、衣類と汚れ、植物の葉と農薬液滴など、異なるものが接する境目として至るところに存在します。花王はこの境目の性質を細かく設計・制御することを、成長戦略の中核に置いています。
放送情報
| 項目 | 内容 |
| 番組 | 日経スペシャル カンブリア宮殿 |
| 放送 | 2026年10月1日(木)23:06~23:55 |
| 企業 | 花王 |
| ゲスト | 長谷部佳宏 代表取締役 社長執行役員 |
| 中心技術 | 精密界面制御技術 |
| 主な展開 | 日用品、化粧品、先端材料、半導体精密洗浄、農業用アジュバントなど |
そもそも「界面」とは?
界面は、性質の異なる二つの物質や相が接している境目です。例えば、水と油が混ざりにくいのは二つの物質の間に界面があるためです。衣類に付着した皮脂汚れを水で洗うときも、汚れ・水・繊維・洗浄成分が接する界面で何が起きるかが洗浄力を左右します。
花王の長谷部佳宏社長は、精密界面制御技術を「異なる物質が接する界面を原子・分子レベルで設計・制御する」技術として説明し、単なる要素技術ではなく価値創出のエンジンと位置付けています。
洗剤の技術がなぜ半導体に使える?
花王のトップメッセージでは、衣料用洗剤や身体用洗浄料で磨いてきた「選択洗浄技術」を半導体の精密洗浄へ応用していることが示されています。ポイントは、何でも強力に落とすのではなく、落としたい対象へ選択的に働きかける考え方です。
衣類や肌では素材を傷めずに不要な汚れを落とす必要があります。半導体の製造でも、微細で繊細な表面を扱いながら、必要な洗浄を精密に行うことが求められます。対象は大きく違っても、「表面で何を残し、何を取り除くか」という界面設計の考え方には共通部分があります。
農業では「葉をぬらす」技術になる
花王は精密界面制御技術を農業分野にも展開しています。植物の葉は水をはじきやすいものが多く、農薬を散布しても液滴が十分に広がらないことがあります。そこで利用されるのが、農薬の働きを助けるアジュバント(補助剤)です。
花王は、液体の表面張力を下げるだけでなく、疎水性の固体表面に効果的に作用する基剤を探索し、液体と固体の界面張力を大きく下げる技術を開発したと説明しています。これにより、植物の葉の表面へ液滴がぬれ広がりやすくなります。
ドローン散布にも応用
農業用アジュバントでは、ぬれ性に加えて蒸発抑制やドリフト(飛散)抑制の技術も組み合わせ、ドローン散布への応用が進められています。少ない散布量で効果を出しやすくすることは、省力化や農薬使用量の削減という農業課題にもつながります。
日用品メーカーが産業分野へ広がれる理由
花王は日用品だけでなく、産業向けのケミカル事業も持つ企業です。そのため、家庭用商品で蓄積した界面化学の知見を、材料や製造工程へ展開する土台があります。
長谷部社長は、精密界面制御技術を高い知覚品質を持つ商品だけでなく、環境負荷低減と高機能化の両立、高次元の先端材料の製造といった成長分野にも不可欠だとしています。技術を一つの商品カテゴリーに閉じ込めず、別の産業課題へ再編集することが、今回のカンブリア宮殿で語られる「事業領域を広げる戦略」の核心です。
「精密界面制御」は単一の発明ではない
精密界面制御技術という名前から、一つの特許や一種類の成分を想像するかもしれません。しかし実際には、界面活性剤、洗浄、乳化、分散、吸着、濡れ、材料設計など、多くの研究の蓄積を束ねた技術基盤として理解する方が近いでしょう。
アタックZEROの洗浄、ビオレの毛穴洗浄、農業用アジュバント、半導体精密洗浄は、製品も顧客もまったく異なります。それでも、表面や境界で起こる現象を制御し、必要な機能へ変換するという共通の研究言語があります。
花王が技術を事業化するときの考え方
中期経営計画「K27」では、花王が持つ技術資産を早く、大きく活用するために、パートナーとの共創による事業構築を戦略の一つに置いています。研究所の技術だけで完結させず、市場や他社との連携を通じて事業へ変換する考え方です。
この視点で番組を見ると、「すごい技術がある会社」という説明から一歩進みます。重要なのは、技術をどの社会課題へ当て、どの顧客にとって欠かせない価値へ変えるかです。花王が掲げる「グローバル・シャープトップ」も、世界中のすべての分野で最大を狙うのではなく、特定の重要ニーズで唯一無二の存在になることを目指す戦略として示されています。
参考・公式情報
- https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/
- https://www.kao.com/jp/investor-relations/management-information/top-message/
- https://www.kao.com/jp/innovation/research-development/fundamental/material-science/adjuvants/
- https://www.kao.com/jp/corporate/strategy-and-mid-term-plan/
よくある質問(FAQ)
花王の精密界面制御技術とは何ですか?
異なる物質が接する界面を原子・分子レベルで設計・制御し、洗浄・濡れ・材料機能などの価値へ変える花王の中核技術です。
半導体にも花王の技術が使われていますか?
花王は、衣料用洗剤や身体用洗浄料で磨いた選択洗浄技術を半導体の精密洗浄へ応用していると説明しています。
農業では何に使われますか?
農薬液滴を植物の葉へぬれ広がりやすくする機能性アジュバントや、ドローン散布時の蒸発・飛散抑制などへの応用が進められています。
界面制御技術は一つの製品専用技術ですか?
いいえ。日用品、化粧品、先端材料、農業など複数分野へ展開する基盤技術として位置付けられています。
まとめ
花王の精密界面制御技術は、洗剤だけの技術ではありません。汚れを落とす、表面をぬらす、必要なものだけを選択的に洗うといった界面での現象を制御し、日用品から農業、半導体へ応用する技術基盤です。
10月1日のカンブリア宮殿では、花王がこの長年の研究資産を再構築し、新たな事業領域へ広げる戦略が中心になります。個別商品のヒットだけでなく、「同じ技術の核がなぜ異分野でも価値を生むのか」を意識して見ると、花王の強みが理解しやすくなります。

