「サンタさんって、どこに住んでるの?」
小さな子どもの問いに、大人はいつも笑って答えます。
けれど、その答えを本気でたどっていくと、意外にもその旅の始まりは“トルコの小さな港町”にありました。
すべては一人の司教からはじまった
今から1700年以上も昔。
地中海に面した古代の町ミュラ(いまのトルコ南西部・デムレ)に、一人の司教がいました。
その名は――ニコラウス。
彼は紀元280年ごろ、パタラという町に生まれ、貧しい人々に自分の財産を惜しみなく分け与えたことで知られる人物です。
ある伝説では、貧困に苦しむ娘を救うために、夜中にこっそり金貨を投げ入れたとも。
別の話では、悪どい宿屋の主人から、塩漬けにされそうだった少年たちを救い出したとも語られます。
人々は彼を“子どもと弱者を守る聖人”として敬い、死後もその名はヨーロッパ中に広がりました。
そして彼の命日である12月6日が、「聖ニコラウスの日」となったのです。
馬にお供えをすると、お菓子がもらえる?
やがて、ニコラウスの日には子どもたちが、聖ニコラウスの馬(またはロバ)に食べ物を供える風習が生まれました。
夜が明けると、靴の中にはお菓子が入っている。
これがサンタクロースの「プレゼント文化」の原型といわれています。
中でもこの風習をいち早く受け入れたのがオランダ。
オランダではニコラウスを「シンター・クラアス」と呼び、彼を祝うお祭りが定着しました。
シンター・クラアス、海を渡る
17世紀、オランダ人たちは新大陸へ旅立ちます。
彼らがたどり着いた地――それがのちのニューヨーク(旧ニューアムステルダム)です。
このとき、彼らはシンター・クラアス信仰も一緒に持ち込みました。
現地では、オランダ語の発音「シンター・クラアス」が英語風に変化していきます。
その名も――サンタ・クロース。
こうして、聖ニコラウスの物語は新世界で新しい姿に生まれ変わりました。
クリスマスとひとつになった日
当初、サンタが訪れるのは「12月6日」でした。
しかしいつしか、キリストの誕生日=クリスマス(12月25日)とひとつにまとめられます。
サンタは子どもたちに夢を届ける“冬の主役”となり、贈り物もお菓子からおもちゃや本へと豪華に。
かつての聖ニコラウスは痩せた厳格な司教でしたが、時を経て、白いひげをたくわえた、ふくよかで優しい笑顔のサンタさんに姿を変えていったのです。
サンタとともに生きる、世界の冬
19世紀には、アメリカのサンタが海を越えてイギリスへ。
そこでは「ファーザー・クリスマス」と融合し、さらに世界中へと広まりました。
いまでは宗教を超えて、誰かを思いやる心の象徴として愛されています。
たとえ宗教的には異なる土地でも、子どもたちが目を輝かせてサンタを待つ夜――
それは、聖ニコラウスが願った「誰もが幸福を分かち合える世界」が、確かに息づいている瞬間なのかもしれません。
まとめ
- サンタの起源は、トルコ生まれの聖人「ニコラウス」
- オランダで「シンター・クラアス」と呼ばれ、やがてアメリカで「サンタ・クロース」に
- 12月6日の祭日がクリスマスと結びつき、今の姿に
- 厳格な聖人から、世界中の子どもを笑顔にする“陽気なおじさん”へ変化した


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