会社員の節税に役立つ給与所得控除の基礎知識

会社員は個人経営主やフリーランスと違って経費控除による節税ができません。しかし給与所得者だからこそできる控除があるのです。給与所得控除は、サラリーマンやOLなど給与所得を受ける会社員向けにとっての、控除システムだと言えるでしょう。
記事では会社員の節税ポイントである「給与所得控除」について解説します。


 

給与所得控除とは

給与所得控除とは、雇用形態や職種に限らず、会社や企業に所属する「会社員」が、年収から差し引くことができる税金控除のことです。給与所得を理解するには、まず年収と所得の違いについて理解する必要があります。

年収と所得の違い

年収と所得とは、同じ意味を持つ言葉のように思えますが、厳密に言えば違います。会社員にとっての年収とは、勤め先から得られる給料のことです。年収から給与所得控除を差し引いたあとの金額が、所得となります。そして給与所得控除の金額は、年収によって決まるのです。

会社員の必要経費のようなもの

フリーランスで働く人にとって、仕事で使用する備品購入費や打ち合わせで利用した飲食代金は、経費として計上します。もれなく計上することで節税対策になるのです。しかし会社員は、経費による節税ができません。代わりに給与所得控除が設定されているのです。そのため給与所得控除とは、会社員にとっての経費控除のようなものという考え方ができるでしょう。

給与所得控除の計算方法

給与所得控除は、会社員にとっての節税ポイントです。そのため少しでも得になるよう、計算を工夫したいと考える人もいるでしょう。しかし給与所得控除の金額を導き出す計算式は、年収によって決まっているのです。

年収によって控除額が決まる

給与所得金額は以下の計算式によって決まります。

180万円以下の場合、収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)
180万円超~360万円以下の場合、収入金額×30%+18万円
360万円超~660万円以下の場合、収入金額×20%+54万円
660万円超~1000万円以下の場合、収入金額×10%+120万円
1000万円超の場合、220万円(上限)

例えば年収が300万円の会社員の場合、300万円×30%+18万円となり、給与所得控除の金額は108万円となります。そして収入300万円から給与所得控除108万円を差し引き、残りの192万円が所得となるのです。
年収が700万円の会社員の場合、700万円×10%+120万円となり、給与所得控除の金額は190万円となります。そして収入700万円から給与所得控除190万円を差し引き、残りの510万円が所得となるのです。

雇用形態や職種によって変わらない

給与所得控除は、年収によって変わりますが、雇用形態や職種によっては変わりません。正社員でも契約社員でもパートやアルバイトでも、皆一様に同じ計算式によって導き出されます。

給与所得控除の引き下げによる増税

平成26年度の税制改革によって、給与所得控除の金額が引き下げられることになりました。これは平成32年まで段階的に行われる予定です。
平成32年(2020年)分からは以下のように変わります。

180万円以下の場合、収入金額×40%-10万円(55万円に満たない場合には55万円)
180万円超~360万円以下の場合、収入金額×30%+8万円
360万円超~660万円以下の場合、収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円以下の場合、収入金額×10%+110万円
850万円超の場合、195万円(上限)

このように殆どの場合で控除額が10万円低くなります。さらに上限が、220万円(年収1000万円超)から195万円(850万円超)に引き下げられました。これは給料を得るすべての会社員に対する増税となります。

給与所得控除に関する注意点

給与所得控除は、すべての会社員にとって共通の認識です。しかし場合によってはイレギュラーな対応が必要になることもあります。その注意点はなんでしょうか。

会社を辞めた場合

会社を辞めた場合、給与所得控除は計算できないことがあります。なぜなら給与所得控除とは、あくまでも年収に応じて決まるからです。たとえば会社を年の途中で退社した人は、その後再就職をするか、働かずに無収入として生活するかが未定です。そのため例えば源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が空欄となっている場合があります。

年収に含まれない費用

そもそも給与所得控除は年収によって決まります。しかし一部の費用は非課税なので年収に含みません。これら非課税項目を含めた年収で、給与所得控除の金額を試算しようとすると、結果が間違ってしまうので注意が必要です。非課税項目には、通勤定期代などがあります。毎月の給与に含まれることが多いので、勘違いしないようにしましょう。

会社員は確定申告で個別に節税

給与所得控除は増税の流れにあります。そのため会社員が節税しようとしても限界があるのです。一方、特定支出控除という、会社員が個別に申請することで節税できる制度もあります。このような制度を利用するためには確定申告が必要になることもありますが、節税が目的の場合は一度検討してはいかがでしょうか。

参考:スーツで会社員が節税できる!特定支出控除の丸わかりポイント

このテーマの関連記事はこちら