ネタバレ感想-不動産の落とし穴にハマるな! マイホームや投資で失敗しないための心理学入門

畑中学さんの『不動産の落とし穴にハマるな! マイホームや投資で失敗しないための心理学入門』を読みました。

 

  • タイトル:不動産の落とし穴にハマるな! マイホームや投資で失敗しないための心理学入門
  • 著者:畑中学
  • 初版発行: 2014/9/18

◎不動産は最も高額な商品であるにもかかわらず、「衝動買い」「申し込み後即キャンセル」など、合理的ではない判断で売り・買いが決められるケースが、意外に多いものです。結果として、高額のローンを払いきれずに破産に追い込まれたり、不満を抱えながら住み続けるなど、「後悔先に立たず」を地で行く購入者が多数存在します。
また、購入者が不動産を数年保有した後に売る側になると、愛着があるゆえに中古物件の相場観を無視した価格を設定し、結果として売りそびれる、といったケースが跡を絶ちません。
その原因を探ると、売買を仲介する不動産業者の「売らんかな」「儲けまっせ」という策略や誘導にハマるケースもあれば、消費者(買い手)や売り手自身が「思い込みのワナ」に陥ることもあるようです。
本書は、心理学や行動経済学の知見を取り入れながら、不動産売買で足を取られやすい「落とし穴」とその背後にある私たちの思考パターンについて、不動産業者である著者が実際に関わった事例を織り交ぜながら、じっくり解説していきます。
参考になればと思い、項目のタイトルをいくつかご紹介します。
★「奥さん主導がいきすぎる」と高くつく?
★「今の住まいから抜け出したい」で買ってはいけない
★「最初に出会った良い物件」に縛られてはいけない
★「相場より安すぎる」からといって敬遠してはならない
★「売り出してすぐ現れた買い手」は見送るな etc.
執筆の準備段階では、2010年以降に首都圏で住宅を購入した1000世帯を対象にしたアンケート調査も実施。客観的なデータに基づく内容に仕上がりました。調査の結果については、円グラフや棒グラフというかたちで、随所に挿入していきます。
これから不動産を売買する一般の人はもちろん、複数の不動産を所有する不動産投資家、さらに売買の仲介をする不動産業者や資金のサポートをする金融マンまで、幅広い方々に読んでいただきたい一冊です。

概要引用元:amazon

以下では本書の目次(もくじ)を元にして、一部ネタバレと私の感想を書かせていただきました。

目次

第1章 不動産を買うときの落とし穴にハマるな!—感情編

「今の住まいから抜け出したい」で買ってはいけない—背伸びして状況改善病では失敗する

不動産購入の動機は、現状を変化させたいという欲求
理想的な物件に惑わされずに、自らの購入動機を見据えた物件選びが大切。

「家を見終わる前に7割方決めている」って本当ですか!?—バルコニー決断の法則を業者は利用する

不動産の購入は、直感的に決めてしまいがち。
そのため、最初から身の丈に合った条件の不動産から選ぶようにすると良い。

「申し込み後、すぐにキャンセルしてしまう」心理の裏側—購入の決断は、冷静と情熱の間を行ったり来たりする

購入後すぐにキャンセルする原因は、直感的に決めて勢いで買うから。
後々不安が生まれるとキャンセルにつながってしまう。
そうならないためには、身内や信頼できる人に相談したり、勉強して知識を増やして、不安を払拭してから購入すると良い。
逆に不安があるときは買わない方が良い。

「いい不動産」は買ってはいけない-資金計画より先に物件ありき症候群の落とし穴にハマるな!

不動産購入の考え方のフローは、内的要因(マイホームに対する要望や希望)から外的要因(実際に買えるかどうかの資金力など)に向けて流れがちになる。
外的要因から内的要因に向かう考え方、つまり、自身のマイホーム購入力を知ってから、その範囲で物件選びをするようにしないと、だんだん無理が出てくる。
★まさに私が指摘されているとおり、要望ありきの内的要因から外的要因に向けての思考フローをしていました。
客観的に指摘されると、改めて改善しようと思いました。

「家族内で意見が分かれた場合」はどうなりやすいか-不動産は感情で決めて、理性で納得させる傾向が強い

マイホーム購入について、家族間で意見が分かれる方が割合的に少ない。
★だから何?という内容です。

「奥さん主導がいきすぎる」と高くつく?-女性は男性とは違う幸せの評価基準で家を選ぶ

マイホーム購入には奧さんの意見が重要視される。
奧さんの代表的な選考基準は3つある。
女性としての幸せ評価基準(見栄)
清潔感と安心感の雰囲気(中古を嫌う理由)
年代格差による意識の違い(マイホームは買ってもらって当たり前という考え方)
★女性をディスってるだけの内容かと思いきや、実際の妻に置き換えてもある程度は外れていませんでした。世間的にもそういうものかと、変に感心してしまいます。

第2章 不動産を買うときの落とし穴にハマるな!—価格&交渉編

「最初に出会った良い物件」に縛られてはいけない—高嶺の花や激安物件にとらわれないために

物件価格が適正かどうかを客観的に判断する基準はない
唯一、自分自身の感覚で判断するアンカリングがある。
アンカリングとは、最初に見た物件を適正基準として、以後の物件を評価するようになる心理状態のこと。
物件価格の差額は、500万円まで受け入れることが多い。
物件の比較検討は大切だが、アンカリングに左右され過ぎないよう気をつけると良い。
気をつけるポイントは、物件内容をよく吟味する、実際に見ていない物件は比較しない、極端な物件は最初から除外する、の3つ。

「値引き交渉」で端数にこだわるのは負けと心得よ—80万円値引き満足の法則を知っておこう

物件価格の端数(十万円単位)には意味がある。
売り主が値引き用につけていることがある(例:3980万円の80万円)
値引きに紛らわされずに適正価格かどうかに注意しましょう。

「相場より安すぎる」からといって敬遠してはならない-極端なリスク回避症候群に陥らないように

高すぎたり安すぎたりする物件を避ける心理状態を端的回避性と呼びます。
安かろう悪かろうという、根拠のない不安により、せっかくの掘り出し物物件を逃してしまうこともある。
不安の元はハッキリしないリスクです。
事前調査で明らかにしてリスクヘッジすることが大切です。

不動産は急かされて買ってはいけない-「今しかない」「競合しています」という希少性のワナに要注意

希少性に惑わされて、慌てて物件を購入してはいけない。
逆に、競合相手がいない状況だからと言って、悪い物件ではないかと、疑心暗鬼になってもいけない。
状況に流されず確かな不動産評価が大事。

複数の不動産を見るとき、どの順番で見ていくべきか-キタナイ物件から見ていくと良く見えるラスト本命の法則を意識する

不動産を見る順番は大切。
汚い物件を見た後にきれいな物件を見ると実際以上によく見える。
認識力が弱いと多数の物件を見た後半に決定する傾向がある。
見る順番に惑わされずに個々の内容を吟味して決めるようにすると良い。

不動産会社の営業マンを軽く扱ってはいけない-自己開示性を高め、こまめに連絡をとろう

不動産屋との付き合いは、良い不動産を購入するためには不可欠。
自己開示性を高めると信頼関係が築ける。
具体的には、予算や間取りなど細かな要望や数字を含む個人情報を出来るだけ伝える。不動産屋からのメールには必ず返信するなど。
ただし、しつこそうだったり、ビジネスライクな付き合いが出来なさそうな相手は避ける。
不動産屋ありきで物件紹介から購入までたどり着けるとよい。

第3章 不動産を買うときの落とし穴にハマるな!—思考編

「もう何件不動産を見たら」良い物件に出会えるのだろう—見ているだけで決まらない見学漂流者症候群からどう脱け出すか

数多くの物件を見すぎると、選択肢が広がりすぎて、かえって迷ってしまい、決められなくなる。
フレーミングの法則を使い、物件をフレームに当てはめて、選択肢を絞ると、迷わなくなる。
フレームの条件は、価格や立地など最低限は譲れない希望などで設定するとよい。
フレームを先に作ってから物件を見るのが不動産選びの定石。

条件を絞ったが希望の物件に出会えないのはなぜ—思考を柔軟にする拡大フレーミングの法則を活用する

フレーミングで条件を厳しくしすぎると、いくら見ても決められない状態に陥ることがある。
そんなときにはフレームの枠を広げる柔軟性も必要。
復活した候補物件の中から良い物件が見つかることもある。

「わかりやすいから買う」では良い物件をつかめない-限定合理性のワナにハマっていませんか

メリットがわかりやすい物件だけを見ていると、掘り出し物を見逃すことがある。
メリットが隠れている物件がないか注意深く見る必要がある。
そのためには自身の知識の幅を広げる勉強をしなくてはならない。

「数をこなせば」「時間があれば」不動産選びに満足するわけではない-家探しに満足感を与える期間限定の法則

物件探しの数と満足度は比例しない。
無駄に時間をかけるより、期間を限定して探すと良い。
三ヶ月程度を目安にして、その期間中に見つからなければエリアや条件を変更することも考慮すべき。

“せっかくだから”とオプションを増やすと後が怖い-舞い上がる心の裏にある現在志向バイアスとプロスペクト理論

不動産購入時にはオプションを加えがちだが、気をつけないと予算オーバーとなる危険がある。
将来的になんとかなるだろう、と希望的観測で支払い能力を超える物件は勝手はいけない。

第4章 不動産を売るときの落とし穴にハマるな!

「新築だから買った物件」は目線が合わないと売るのは難しい—日本人に特有の新築プレミアムを頭に入れよう

新築プレミアムは日本人特有の感覚。
新築価格は中古に比べて3-4割も増す。
★裏を返せば、中古なら新築と同等のスペックの物件でも、安く買える可能性があると言うこと。

売り出す物件に対する「業者の査定価格」が低いなと感じたら—保有効果にとらわれず買う人の目線を大事にしよう

自分の家を売るときに高く評価してしまいがちだが、買い主目線で適正評価をしないと売れない。
★ということは、中古物件とはいえ、割高な物件も存在している可能性があると言うことだと思う。

案内はあるけどなかなか売れない理由とは?-売主アンカリングにかかっていないかを考える

売り主アンカリングは多種多様なケースが多い。
プロとともに客観的な査定が必要。
★買う立場から見ると、中古物件の価格は、ある程度売り手の素人が感情的に決めていると言うことか?
仮説として、売り出してすぐの物件価格は割高なのかもしれない。

「とりあえず高い価格から売り出してください」は正解か?-鮮度の法則とブーメラン効果に注意しよう

不動産の買い手は、長い間売れ残っている物件を、問題物件と感じる節がある。
売り手もそんな買い手の心情を気にして、長く売り出すことを嫌う。

似ている不動産の中で埋もれてしまったらどうする?-買主が検討する3つの候補に入り逆フレーミング効果を利用する

中古物件の売り主は、市場価格を見て価格を決める。
似ている物件を洗い出して、上位三位に入るような特徴のアピールをすれば売りやすくなる。

「売り出してすぐ現れた買い手は見送るな-早く売れすぎると損をするという売主プロスペクト理論から脱しよう

中古物件の売り主は、売り出し直後の購入希望者を疑る
価格が安すぎたのかもしれないと思い、値引きにも応じない傾向がある。

『不動産の落とし穴にハマるな! マイホームや投資で失敗しないための心理学入門』を読み終えて

マイホーム物件を買った人の話を聞くと、探し始めてから実際に買うまでが意外と短いことをいつも不思議に思っていましたが、本書を読んで少し理解できました。

購入時の人間の心理状況の変化が、理論立てて説明されている書籍は初めて読みましたが、普通の読み物としても面白かったです。

心理的分析を知っていると、自分自身を俯瞰で見ることが出来るようになり、実際の購入時には冷静にベストの選択ができるようになる、かどうかはわかりませんが、その一助にはなると思います。

「ローンのお得な借り方!」というようなハウツー本ではありませんが、少し違った角度からマイホーム購入について学ぶことが出来るので、お勧めです。

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