ネタバレ感想-住宅ローンのしあわせな借り方、返し方
中嶋よしふみさんの「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方」は、とても人気でamazonで書籍として買うことが出来ず、kindleで購入しました。
住宅ローンという単語がタイトルにありますが、著者の方がファイナンシャルプランナーということで、保険の見直しや、投資についてまで幅広く書かれています。
他の住宅ローンと本書の違いは、お得な情報があまり書かれていないことです。
誤解しないでいただきたいのは、得をするより、損をしないことに重点を置いた内容になっているということです。
本書では、損をしないためのリスクヘッジがメインテーマに書かれています。
また、一般的に正しいと言われている常識に対して、逆説を説く構成になっている点も興味深く読めました。
読んだ後には、世の中に出回る情報が、どれだけ私たちの購買心理を煽るように説かれていたかがわかります。
知らないって怖いですね。
以下では本書の見出しを元にして、一部ネタバレと私の感想を書かせていただきました。
目次
1はじめに伝えたいこと
住宅ローンを借りるときには、返済できなくなるリスクと、将来のライフプランについて考えることが大事であると教えてくれます。
もちろん、この二つは誰もが考える基本的なことですが、キチンと理論立てて考えているかどうかは疑問です。
どうしても、住宅ローンの得な借り方や、理想ばかり詰め込んだ将来像へ意識が向きがちになってしまいます。
本書では、それらについて、少し立ち止まって正しいかどうか考えてみよう、というところからスタートします。
2持ち家はお得なのか
住宅を購入しようとしたときに、もしくはそう決意する前に必ずみんな比較するであろう「賃貸vs持ち家」論争。
普通なら、かかるお金を比べて、どちらが得なのかという議論になりがちですが、本書では損得で比べることは間違っていると言い切ります。
本書では、より安定した生活を送れるのはどちらか?という視点で切り込みます。
家賃とローン返済の金額がたとえ同じでも、ローン返済の方が多くのリスクを伴っているという意見は参考になりました。
また、家というものに対して、年齢が若いうちに、早く買った方がいいという常識には、修繕費などの費用がより多くかかってしまうというデメリットがあることに、初めて気付かされました。
3お金はどこまで借りていいのか
世間的によく言われる、ローン返済金額は給料の25~35パーセントまでとか、年収の5倍までの物件価格が妥当だとか、頭金は物件価格の2割までだとかいうのが、すべて迷信だとわかりました。
あれ、なんの目安にもならないんですね。
確かに人によって年収は様々ですからね。
年収1億の人と300万円の人の計算式が一緒では、確かにおかしい。。。
この章では、リスクヘッジをキーワードにして、「貯金額」と「ライフステージの変化に伴う収支の変化」の面から試算を出す方法を教えてくれます。
マイホーム購入の予算をギリギリで考えることの危うさと、バッファーという概念を初めて知ることが出来てよかったです。
また、むやみやたらに大金を頭金としてつぎ込むことより、繰り上げ返済でカバーする方が、リスクが低く安定した生活を送ることが出来る、という考え方も参考になりました。
他には、フラット35を代表とした固定金利と変動金利の選び方、夫婦での借り方についてもアドバイスを書かれています。
4ローンの繰り上げ返済どうする?
私もローンの繰り上げ返済は初年度からガンガン行った方がいいと思っていました。
しかし、一概にそうとも言えないようです。
なぜなら節約効果が薄いうえに、生活破たんのリスクが増すから。
まさに、ハイリスク・ローリターンのいいとこ無し、のようです。
住宅ローンとは、借りる前から計画的に、借りた後も計画的に付き合っていく必要があるようです。
とにかく、貯金(バッファー)ありきで、ゆっくり繰り上げ返済計画を立てていくことが大事と教えてくれます。
財布に余裕がないから住宅ローンという借金をしたのに、その余裕のない財布から、更に搾り取ったお金で繰り上げ返済していくことには、危うい矛盾があるという指摘には、目からウロコです。
5子育てしながらローンは楽に返せるのか
個人的には一番注目した章になります。
子供を育てるにはお金がかかる。
だから、多くのご夫婦が、マイホームが先か、妊娠出産が先かで迷われているんですね。
例として書かれていたケースは、正直リッチ過ぎて、いまいちピンときませんでしたが、要点はわかりました。
要するに、子育てとマイホーム、両方お金がかかるから、今仕事にありついているママは、石にかじりついても離さない方が、後々は絶対に楽になりますよ、というお話です。
主張されていることはわかるんですけどね。
今はまだ、そこまで割り切れない部分ではあります。
あとは、家計の節約はあまり意味がないということが書いてあります。
6ローンを借りたら家計の管理はどうすればいいか
この章からは、急に生活感のある家計簿のつけ方のお話となります。
家計簿は、ざっくり手間がかからないようにつけた方が、全体像を把握しやすくなって、結果的に活用できますよ、という実践アドバイス的な内容でした。
中でも、1万円以上の出費と、家賃や公共料金などの固定費と、その他の食費や雑費だけにざっくり区分けした家計簿のつけ方は参考になりました。
その上で、支出に優先順位をつけて、改善の余地がある箇所を手当てするという考え方は合理的だと感心します。
そもそも、家計簿はただつけているだけでは意味がないんだな、と実感しました。
7ローン返済のための保険は
家計簿の章を読んでいるときに思ったのですが、我が家のように改善する余地などない場合はどうしたらいいのでしょうか。
その答えはこの章、保険の見直しに書いてありました。
唯一削減できそうな金額の大きな固定費が保険料だといいます。
確かに、一度入った後には、あまり見直しせずにいました。
しかも、私の場合、本書で必要ないという医療保険にもガッツリ入っていたので、早速見直してみたいと思います。
それにしても、保険に入ったときは、それが無駄だとは微塵も思っていませんでした。
それを思うと、正しく情報を取り入れて生かしていくことは、何事にも重要で、かつ難しいのだなと実感します。
そういう意味で、本書で最後に少し触れている資産運用について、興味がないことはないですが、手を出すにはきちんと勉強してからじゃないと駄目ですね。
『住宅ローンのしあわせな借り方、返し方』を読み終えて
私の場合、マイホーム購入で得してやろう、という気持ちは元々少なく、むしろ本書のコンセプトに近い「危ない橋は渡りたくない」気持ちでいたので、無理なく読み進めることが出来ました。
人によっては、そこまで用心深くならなくてもいいじゃないか、と思う人もいると思います。
それでも、家庭を持っている方は、ある程度用心深くならなければ、あとで手痛いしっぺ返しを食らってしまうかもしれません。
そうならないためにも、マイホーム購入を検討された時には、本書に書いてあるアドバイスを一度ご自分の中に取り込んで咀嚼することをお勧めします。
私も、お金の試算や家計簿のつけ方など、早速参考にしてみたいと思いました。