脚本の見本

映画「清州会議」の脚本が見本!偉人を庶民にする三谷幸喜のセリフ

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三谷幸喜が脚本と監督をつとめた映画「清須会議」は、相変わらずの三谷節がきいた、いぶし銀な魅力を持つ映画です。

そんな清須会議のファーストシーンを脚本に起こしました。見本としながら確認していきましょう。


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映画「清州会議」ファーストシーンの脚本

  • ■城・外廊下
  • 箱を脇に抱えた前田玄以玄以が歩いてくる。
  • すれ違う家来が「おはようございます」と、お辞儀する。
  • 玄以も「おはよう」と二言三言の言葉を交わしてから、行く。
  • ■城・大広間
  • 入ってくる玄以。
  • 中央まで来て正座。
  • 箱を開け、巻物を取り出す。
  • 厳かにヒモを解くと、バッと広げる。
  • どこまでも転がる絵巻物。
  • ■絵巻物
  • 戦国時代の武家屋敷が描かれている。
  • 本能寺の絵に火が放たれる。
  • 見る見る燃え広がってゆく。
  • ■本能寺・一室(夜)
  • 織田信長が眠っている。
  • むっくり起きる。
  • 信長「・・・くさい」
  • ハッとして外に目をやる。
  • ■本能寺・外観(夜)
  • すでに屋敷の所々が燃えている。
  • 次々飛んでくる火矢が、壁に刺さる。
  • 急ぎ来る森蘭丸、障子の前で
  • 蘭丸「御免」
  • と、勢いよく開ける。
  • ■本能寺・一室(夜)
  • その場に座した蘭丸。
  • 蘭丸「明智日向守、御謀叛」
  • とだけ告げ、行く。
  • ふすまを開ける信長。
  • すでに火の海。
  • 外を見ると敵の足軽が一人。
  • 信長、刀を取り、抜く。
  • 足軽と刀を合わせ、押し返し、斬り伏せる信長。
  • が、勢い余って刀が柱に食い込んでしまう。
  • 取れない。
  • 信長「(焦る)」
  • やがて火が迫り、「熱ちっ!」と、飛び退く信長。
  • ■本能寺・外(夜)
  • 軍勢が城を取り囲む。
  • 炎を見つめる馬上の明智光秀。
  • ■絵巻物
  • 燃える本能寺。
  • その北に位置する二条城。
  • ■二条城・一室(夜)
  • 織田信忠「戦上手の日向上。父上といえども助かるまい」
  • 松姫「親方様が・・・」
  • 甲冑姿の信忠。
  • 松姫・松姫と息子・三法師が身を寄せておびえている。
  • 信忠「ここも明智の軍勢が寄せ来るのは必定。わしは籠城して最後まで戦う所存だ、おまえたちは早々に落ち延びよ」
  • 松姫「私もここに残ります」
  • 信忠「それはならん! 三法師をつれ清洲へ向かうのだ」
  • 松姫「嫌でございます」
  • 信忠「わしを困らせるな!・・・だから来るなと言うたのだ」
  • 信忠、松姫に寄り
  • 信忠「マツ、三法師を頼む」
  • 松姫「・・・(やっとうなずく)」
  • 信忠「玄以、後は任せた」
  • 玄以、ふすまの陰に控えている。
  • 玄以「かしこまりました」
  • 刀を取り出て行く信忠。
  • 松姫は三法師を抱き寄せる。
  • 障子を開け放つと、本能寺の火が見える。
  • 信忠「これで、戦の世に逆戻りだ」
  • ■絵巻物
  • 二条城から少し離れた場所に野営地がある。
  • 黄色の旗は秀吉の旗。
  • ■野営地・全体
  • 兵士たちが要塞を築いている。
  • ■同・本陣
  • 黒田官兵衛が羽柴秀吉に寄り、耳打ちする。
  • 官兵衛「丹羽様がお見えです」
  • 陣に入ってくる丹羽長秀。
  • 秀吉、部下の用意した羽織を、要らないと押し返す。
  • 代わりに食べかけの大きな握り飯を預け、
  • 秀吉「長秀殿! これはこれは」
  • と、手に付いた米粒を舐めながら、降りて寄る秀吉。
  • 長秀「藤吉郎、よくぞ戻ってきてくれた」
  • 秀吉「おお、5日間、ひたすら駆けに駆けましたわ」
  • 長秀「明智は少なく見積もって一万。我が方は三千。まともに戦っては勝ち目はなかった。待っていたぞ」
  • 秀吉「それがしの方は二万。明智など蹴散らして見せまする」
  • 晴れない表情の長秀。
  • 対して秀吉は高らかに笑う。
  • 官兵衛「織田信孝様がお見えです」
  • 慌てて羽織を身につけ、身なりを整える秀吉。
  • 信孝が陣に入ってくる。
  • 頭を下げる長秀。
  • 秀吉と官兵衛は膝をついて頭を下げる。
  • 信孝「藤吉郎、大義であった」
  • 秀吉「ははー」
  • 信孝「すぐに出陣じゃ」
  • 信孝についてゆく秀吉、長秀、官兵衛。
  • 信孝「この織田信孝が、父上と兄上の敵を討つ」
  • ■絵巻物
  • 秀吉の黄色い旗を中心とした一群が、光秀の青い旗の軍勢を攻め立てて、竹林へ追い込んでいく。
  • ■竹林・けもの道
  • トボトボとくる馬上の光秀。
  • 怪しい人影がつけ狙っている。
  • 光秀「う!(突然の激痛)」
  • 槍が体を貫いている。
  • 馬上から崩れ落ちる光秀。
  • ■本能寺・焼け跡
  • 柱に食い込んだまま焼けた信長の刀。
  • 建物は全て焼け落ちて空が見える。
  • 信長の刀を無念の思いで見つめる柴田勝家。
  • 少し離れて長秀。
  • 勝家「本当に親方様は、もうこの世にはおられんのか」
  • 長秀「・・・考えようだ。むしろ、親方様らしいご最後ではなかったか」
  • 焼け跡には野次馬が群がっている。
  • 長秀「本能寺とともに焼け落ち、突然、髪の毛一本残さずに消えてしまわれた」
  • 勝家「・・・」
  • カランと、物音。
  • 見ると、盗っ人が物色している。
  • 刀を抜いて切ろうとする勝家。
  • 長秀「この場で殺生は控えろ」
  • 勝家「!」
  • 寸での所で刀を止める。
  • 勝家「(盗人に)消えろ」
  • と、刀を鞘に収める。
  • 一目散に逃げる盗っ人。
  • 長秀、野次馬に目をやり、
  • 長秀「ここは立ち入りを禁じよう」
  • 勝家「どうなる、これから織田家は?」
  • 長秀「一刻も早く、信孝様にお家を継いで頂く」
  • 勝家「!」
  • 長秀「そして権六、おまえがその後見として、織田家をもり立てていくのだ」
  • 勝家「わしが?」
  • 長秀「それが、宿老筆頭としての、おぬしの役目だ」
  • 勝家「・・・」
  • 長秀「(勝家の目を見据えて)柴田修理亮勝家」
  • 勝家「うん(と、頷く)」
  • 長秀、采配を渡す。
  • 受け取る勝家。
  • 長秀「問題は藤吉郎だ」
  • 勝家「その名を出すな」
  • 長秀「明智を倒したのは、あの男。これからますます力をつけていくぞ」
  • 勝家、しゃがみ込み焼け跡から壺を手に取る。
  • 勝家「わしは、奴が草履取りの頃から、親方様とともに戦ってきた。サルに織田家を乗っ取られてたまるか」
  • 長秀「だからこそ、おぬしに働いてもらわねばならぬのだ」
  • 勝家「なにをすればいい?」
  • ソッと壺を置く勝家。
  • 長秀「まずは、評定(ヒョウジョウ)を開く」
  • 勝家「評定を?」
  • 長秀「各地に散った家来を一堂に集め、織田家の今後について話し合う。そこで権六の存在を天下に知らしめる。場所は清洲がいいだろう」
  • 勝家「・・・清洲」
  • 長秀「かつての我らの居城。思い出の場所だ」
  • 勝家「(思いをはせ)これは、戦だな(と、決意を固める)」
  • 長秀「そう、戦だ。評定という名の」
  • 勝家と長秀、同じ方を見つめている。
  • ■秀吉の館・縁側
  • ナスが成っている菜園。
  • 縁側では、秀吉が寝そべって扇子を扇いでいる。どこかのんびりした表情。
  • 寧の声「あなた様も見とらんで、手伝ってちょ」
  • 秀吉「今さら畑仕事なんて出来んて」
  • 畑仕事に精を出す妻の寧、母のなか、弟の小一郎。
  • 寧「お母様、藤吉郎様は親方様の敵を討ってから、どえりゃー人が変わったでかんて。まるで天下でも取った気でおるがね」
  • なか「藤吉郎! いくらきれいなべべ着ててもな、おみゃあにゃ百姓の血が流れとるんだで」
  • 秀吉「お袋様はうざこいんだがや」
  • 小一郎「兄じゃ、こんなできゃーのが採れたで」
  • と、ナスを振り上げる。
  • 秀吉、感心して身を起こし、
  • 秀吉「おお、もっと大きなるかもしれんで、そのまま置いときゃあ」
  • 寧、なか、小一郎、そろって「は?」と呆れて秀吉を見る。
  • 小一郎「(呆れて)あんなこと言うとる」
  • なか「たわけ!」
  • 秀吉「なんじゃい」
  • と、勢いよく立ち上がる秀吉。
  • なか「なに、とろくしゃーこと言うとる」
  • なか、寧、小一郎、怒って秀吉に詰め寄る。
  • なか「これ以上置いといたら皮が硬くなるのじゃ」
  • 寧「そんなことも忘れとるわ」
  • 小一郎「百姓の心、失ってる」
  • ここぞとばかりに罵詈雑言を浴びせる三人。
  • たじろぐ秀吉。
  • 秀吉「な、なんなら!」
  • なか「このデカ耳!」
  • 秀吉「あんたのせいじゃ!」
  • そこへ官兵衛が来る。
  • 母らを差し置いて官兵衛を迎える秀吉。
  • 杖をつきつつ官兵衛は書状を持参している。
  • 秀吉、寄る。
  • 官兵衛「届きましたぞ」
  • 書状を受け取る秀吉。
  • その様子を黙って見ているなか、寧、小一郎。
  • 部屋を移る秀吉と官兵衛。
  • ■同・一室
  • 入ってくる秀吉と官兵衛。
  • 秀吉「思いのほか早かったな」
  • と、あぐらをかいて食い入るように書状を読む。
  • 官兵衛「清洲城にて、織田家の跡目相続と御領地の配分を決める評定を行うそうです」
  • 隣に座る官兵衛。
  • 秀吉「(書状を読みつつ)親父殿にしては、随分と手際が良いのう」
  • 官兵衛「おそらく丹羽殿が、傍におられるかと」
  • 秀吉「(鼻で笑って)ふん、なるほどのう」
  • 官兵衛「殿に宿老筆頭の座を奪われるのではないかと、びくびくされてるご様子」
  • 秀吉「とろくさ」
  • と、不敵に笑い書状をぐちゃぐちゃに丸める。
  • ■同・縁側
  • 来る秀吉。
  • 秀吉「わしが望んでるのは、そんなちっぽけなもんじゃにゃーだ」
  • 付いてくる官兵衛。
  • 秀吉、遠くを見据える。
  • 秀吉「清洲かぁ。官兵衛、支度だ」
  • 官兵衛、返事をして頷く。
  • その様子を見つめる寧。
  • 寧「・・・(どこか不安げ)」
  • ■絵巻物
  • 清洲城。
  • ■清洲城
  • 外観から大広間へ。
  • やがて評定が行われる大広間は、まだ静けさを保っている。

※上記は実際に映画「清州会議」を見て脚本に起こした文章です。実際の脚本とは異なります。

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映画「清州会議」の脚本的な感想・レビュー・解説

三谷幸喜の脚本には、常に意外性が含まれており、観客をひきつけます。映画「清須会議」の冒頭シーンでも、織田信長、豊臣秀吉、明智光秀など歴史上の偉人が登場するなか、柴田勝家を主人公に据えるなどして、観る人の意表をついているといえるでしょう。

この特徴はセリフにも表れており、偉人を偉人として扱わず、あえて庶民的な一面を見せることで、観客に親近感を抱かせています。親近感は共感につながるので、観客は物語に引き込まれることになるのです。

登場人物の意外な一面を見せるやり方は、いわば変化球。変化球を投げるとキャラクターに深みを与えることができます。しかし、この手法を真似しようとしたときには、変化球ばかり投げていてはよくありません。キャラクターの本質にあるハズの魅力を見失ってしまうからです。

キャラクターの魅力は、本筋にあります。つまり変化球に対する直球です。そのため、ここぞという場面では直球を投げる必要があるのです。

三谷幸喜の脚本では、変化球と直球のバランスが絶妙といえるでしょう。

三谷幸喜は、変化球で観客を煙に巻いて、忘れたころに直球を投げてくるような脚本家です。脚本を書く時には、このテクニックを大いに真似するとよいでしょう。

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