ICT教育で小学校・中学校・高校の何がかわるの?ざっくり解説

小学生や中学生、高校生のお子さんがいるママさんパパさんは小耳にはさんでいるかも知れない「ICT教育」という言葉。聞いたことはあるけれど内容はさっぱりわからない、という人も多いのではないでしょうか。確かに「文部科学省」や「新学習指導要領」、「プログラミング教育」など、馴染みのない言葉ばかり飛び交っていて、尻込みしてしまうかもしれません。しかし「ICT教育」は、我が子の教育に関係する大事なこと。ざっくりでも理解しておくことをおすすめします。
記事では、ICT教育とはなにかという基本的なことから、なぜ子どもたちにICT教育が必要なのか、また実際に小学校、中学校、高校でどのようなICT教育が行われるのかなどを解説します。

 

まずはICT教育をザックリ理解

ICTはInformation and Communication Technologyの略です。インフォメーションは「情報」、コミュニケーションは「やりとり」、テクノロジーは「技術」なので、一言で言うと「お互いに情報をやり取りする技術」のように訳せます。スマートフォンをイメージするとわかりやすいかも知れません。
またIT(Information and Technology)と混ざって使われることがあるICTですが、2つの言葉は実際にほとんど同じ意味です。ICTの方が、「C=Communication」をふくんでいる分、コミュニケーションを強調したいときに使う傾向があります。

ICT教育は新学習指導要領で定められている

学校教育は文部科学省が示す「基準」が元になっています。その基準が学習指導要領です。戦後8回(2019年現在)にわたって改定が行われており、2020年に9回目の改定が予定されています。その2020年に実施される新学習指導要領のなかで、ICT教育の強化が定められているのです。これによって小学校で初めてプログラミング教育が導入されます。中学校や高校ではすでにプログラミングに関する教育は行われてきましたが、さらに重視されるようになるのです。

日本人はITが苦手?

日本人は、子供であってもひとりが1台スマートフォンを持つ傾向があります。赤ちゃんの頃からスマホに慣れ親しんでおりデジタルネイティブとも呼ばれるほどです。しかし国際的に見ると日本人はITが苦手だという調査結果が出ました。どういうことでしょうか。

ピアック(PIAAC)という成人力をはかる世界規模の調査が平成23年~24年にかけて行われました。成人力という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の3分野を総合してそう呼びます。
この調査で、日本は参加24カ国の中で「読解力」「数的思考力」で1位を獲得。しかし「ITを活用した問題解決能力」では10位でした。そのため日本人はITが苦手と考えられ、解決するためにICT教育が必要、という考え方もあるのです。

世界規模でのICTの波に乗るために

今後、世界規模でのICTの発展はある程度確かなものとして予測されています。というより既に変革は起こっていて、AI(artificial intelligence=人工知能)や、IoT(Internet of Things=物のインターネット)の技術発展は急速に伸びているのです。そして、それは私達の普通の生活にも影響を及ぼすでしょう。完全なアナログ生活は、逆に難しい時代になるかも知れません。

将来を生きる子どもたちは、どのような職種についても多かれ少なかれICTに関わっていくことが予め考えられます。そのときに一般常識としての知識がないと、世の中の流れからおいていかれてしまうかも知れません。このことから、国語や算数と同じようにICTはベーシックな教養のひとつになったといわれています。

ICT教育を小学校から学ぶ狙い

「小学校といえばまだ子供。プログラミングのようなICT教育を始めるのは早すぎる」「そもそもプログラマーにするつもりはない」と考える親御さんもいるでしょう。しかし2020年から小学校でプログラミング教育(ICT教育)が始まることは既に決まったことです。

小学校でのプログラミング教育では、単純にパソコンなどの使い方を学ぶだけではありません。むしろプログラミングを組む時の思考回路を身につけることが重視されています。プログラミング思考とは、問題を発見して、解決するまでのプロセスを、自らの力で導き出す考え方です。この考え方は、子供のうちから身につけたほうが効果的であり、またプログラマーを目指さなくても八百屋さんや公務員にも役立つ能力だと言えるでしょう。

過程を大切にする新学習指導要領

2020年から始まる新学習指導要領では、アクティブ・ラーニングを重視されています。アクティブ・ラーニングとは生徒が受け身ではなく、能動的に授業に関わっていく教育スタイルのことです。問題を見つけて、友達と協力したり、知識を持ち寄ったりして、解決へ結びつけます。大切なことは結果ではなく、そこに至るまでの過程です。授業では、より子どもたちが興味や関心を持つに工夫することが求められています。

プログラミング教育(ICT教育)でも同じように工程が重視されるはずです。単純にパソコンの前に座っているだけでなく、積極的に他者と関わり問題解決の糸口を探すことで、プログラミング的思考を学びます。

小学校でのプログラミング教育(ICT教育)

2020年から新学習指導要領が実施されるに当たり、小学校でのプログラミング教育が始まります。とはいえ先取りしてプログラミング教育を開始している学校もあるほどです。それほど関心が高い分野だと言えるでしょう。

先述したとおり、小学校でのICT教育では、実際にパソコン技術を習得したり、プログラミング言語を覚えたりすることは重要ではありません。ICT機器に実際に触れたりすることで身近に感じることが大切です。

親世代のなかには、スマホは持っていてもパソコンは使ったことがない、苦手だ、というITアレルギーの人がいます。若いうちから慣れ親しんでおくことで、そのような苦手意識を持たないですむメリットも生まれるのです。

プログラミング的思考は理論的思考です。身近な問題が発生したとき、パソコンなどICT機器を使って解決する方法を探ります。さらにICTを活用して世の中を改善していく手段を模索するマインドも育むのです。

中学校でのプログラミング教育(ICT教育)

中学校ではこれまでもプログラミング教育が行われていました。今回の新学習指導要領に変わることで、より現代にマッチした内容に変更されます。

たとえばICTは今現在も日常生活に溶け込んでいる技術です。例えば冷蔵庫や電子レンジといった家電などにも、大元の原理として組み込まれています。これまではそのような基礎的な部分を学んでいました。

今後はより現在の状況にのっとった内容に改定される予定です。具体的には情報通信の分野の重要性が高まっているので、その部分を重点的に学びます。

またこれまでは簡単なプログラミングだけだった授業が、より高度になります。プログラムの制作や動作確認、デバッグ作業(プログラミングのバグ(間違い)を探す作業のこと)などです。

高校でのプログラミング教育(ICT教育)

高校では「情報1」という教科が新設され、すべての学生がプログラミングを学ぶことになります。
内容も本格的になり、DB(データベース)、ネットワーク、コンピュータープログラミングを駆使した問題解決を学びます。
数学などにより情報を研究する情報科学や、ソフトウェアの開発や運用などを行うソフトウェア工学の基礎となる、専門的な知識や技術を身につけることが目的です。

小学校、中学校、高校と段階をふむICT教育

ICT教育は子供の頃から段階的に身につけることが良いとされています。小学校でICTに慣れ親しみ、中学校で基礎的なプログラミングを学び、高校でより高度な専門技術を身につける。結果、ICTの分野で職を見つけて活躍してもいいし、全く別分野を選んだとしても、これらのICTスキルは無駄にならないはずです。それほどICTは世界中に浸透し、今後はより一層ベーシックな知識となると予想されています。

このテーマの関連記事はこちら